製薬企業が過去に臨床試験等で取得した個人情報を、有効な治療方法や薬剤が十分にない疾病等に関する疾病メカニズムの解明を目的とした研究のために、自社内で利用することを考えています。個人情報に係る本人の連絡先を保有しておらず、本人の同意を得ることが困難なのですが、本人同意なしに利用することは可能ですか。

(利用目的による制限の例外)
Q2-14

製薬企業が過去に臨床試験等で取得した個人情報を、有効な治療方法や薬剤が十分にない疾病等に関する疾病メカニズムの解明を目的とした研究のために、自社内で利用することを考えています。個人情報に係る本人の連絡先を保有しておらず、本人の同意を得ることが困難なのですが、本人同意なしに利用することは可能ですか。

A2-14

個人情報取扱事業者は、あらかじめ本人の同意を得ないで、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて、個人情報を取り扱うことができませんが、公衆衛生の向上のために特に必要がある場合であって、本人の同意を得ることが困難であるときには、あらかじめ本人の同意を得ないで、個人情報を当初の利用目的の達成に必要な範囲を超えて取り扱うことが許容されています(法第 18 条第3項第3号)。

製薬企業が過去に臨床試験等で取得した個人情報は、取得の際に特定された利用目的の範囲で取り扱う必要があり、この範囲を超えて取り扱う場合には、あらかじめ本人の同意を得る必要があります。

しかし、一般に、製薬企業が行う有効な治療方法や薬剤が十分にない疾病等に関する疾病メカニズムの解明、創薬標的探索、バイオマーカー同定、新たな診断・治療方 法の探求等の研究は、その結果が広く共有・活用されていくことで、医学、薬学等の発展や医療水準の向上に寄与し、公衆衛生の向上に特に資するものであると考えられます。

また、連絡先を保有していないため本人への連絡ができない等の場合には、「本人の同意を得ることが困難であるとき」に該当するものと考えられます。

したがって、製薬企業が過去に臨床試験等で取得した個人情報を、有効な治療方法や薬剤が十分にない疾病等に関する疾病メカニズムの解明を目的とした自社内の研究のために用いる場合であって、連絡先を保有していないため本人からの同意取得が困難であるときには、同号の規定によりこれを行うことが許容されると考えられます。

なお、当該製薬企業においては、当初の利用目的及び当該研究のためという新たな利用目的の達成に必要な範囲を超えて、当該データを取り扱うことは原則できませ ん。

この外、製薬企業には、倫理審査委員会の関与、研究対象者が拒否できる機会の保障、研究結果の公表等について規定する医学系研究等に関する指針や、関係法令の遵 守が求められていることにも、留意が必要です。
(令和3年6月追加)

検索キーワード