個人情報取扱事業者が、弁護士法第 23 条の2に基づいてなされる報告の請求を弁護士会から受けた場合、その保有する「個人データ」を弁護士会に対し提供することは、個人情報保護法上問題はないか。

5 第三者提供等

Q5-7

個人情報取扱事業者が、弁護士法第 23 条の2に基づいてなされる報告の請求を弁護士会から受けた場合において、本人の同意を得ずに、当該報告の請求に応じて個人データを弁護士会に提供することはできるか。

A5-7

個人情報取扱事業者は、一定の場合を除き、あらかじめ本人の同意を得ないで、「個人データ」を第三者に提供することを禁じられています(個人情報保護法第 27 条)。

一方、弁護士法(昭和 24 年法律第 205 号)第 23 条の2は、弁護士が、受任している事件について、所属弁護士会に対し、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることを申し出ることができ、当該報告請求の申出を受けた弁護士会は、当該申出が適当でないと認めるときは、その拒絶をすることができ、そうでない場合は、当該申出に基づいて、公務所又は公私の団体に照会して必要な事項の報告を求めることができる旨を規定しています。

当該規定に基づき、弁護士会が公務所等に対して照会を行った場合、一般的には、報告することによって得られる公共的利益が報告しないことによって守られる秘密、プライバシー、名誉等の利益を上回ると認められる場合において、公務所等に弁護士会に対する報告義務があると考えられることは、複数の判例も認めるところです。したがって、第三者(弁護士会)が情報の提供を受けることについて法令上の具体的な根拠があることから、弁護士会からの照会に対する回答は、個人情報保護法第 27 条第1項第1号における「法令に基づく場合」に該当するため、当該報告の請求に応じて個人データを提供する際に本人の同意を得る必要はないものと考えられます。

ただし、弁護士会の前歴照会に区長が応じて、公権力の違法な行使に当たるとされた判例(最高裁判所昭和 56 年4月 14 日最高裁第三小法廷判決)にも見られるように、具体的な報告内容によっては、プライバシー権の侵害等を理由に損害賠償請求が認容されるおそれがあることから、報告を行う際にあらかじめ本人からの同意を得ることが望ましいですし、仮に同意が得られない場合に報告に応じるか否かは、その照会の理由や当該個人情報の性質等に鑑み、個別の事案ごとに慎重に判断をする必要があると考えられます。

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