個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)

令和 4 年 2 月
(令和 6 年 3 月更新)
個人情報保護委員会事務局

個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)

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FAQ検索

目次

【凡例】
  • 「法」
    個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)
  • 「政令」
    個人情報の保護に関する法律施行令(平成 15 年政令第 507 号)
  • 「規則」
    個人情報の保護に関する法律施行規則(平成 28 年 10 月 5 日個人情報保護委員会規則第 3 号)
  • 「ガイドライン」
    個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(行政機関等編)
  • 「事務対応ガイド」
    個人情報の保護に関する法律についての事務対応ガイド(行政機関等向け)
  • 「令和 3 年改正法」
    デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和 3 年法律第 37 号)
  • 「法施行条例」
    個人情報の保護に関する法律(平成 15 年法律第 57 号)の規定に基づき個人情報の保護に関して定めた法施行条例

※ なお、特に断りのない限り、本Q&Aにおいて示す法及び政令の条番号は、令和 3 年改正法第 51 条の施行後のものを示すものとする。その他の法令に係る条文は、令和 6 年 3 月 26 日時点の条番号を示すものとする。

1 適用対象

1-1 法第 4 章の適用を受ける者及び業務
Q1-1-1

病院事業を行う地方独立行政法人が、介護事業やリハビリ事業を行っている場合、これらの事業に係る個人情報の取扱いには、民間規律と公的規律のいずれが適用されるのか。

A1-1-1

病院事業を行う地方独立行政法人は、その全体が個人情報取扱事業者に該当することから(法第 2 条第 11 項第 4 号及び第 16 条第 2 項第 4 号)、当該地方独立行政法人が病院事業に附帯して介護事業やリハビリ事業を行っている場合についても、これらの事業を含む全ての業務について民間規律(開示請求等に関する規律を除く(法第 58条第 1 項第 2 号)。)が適用されることとなります。

なお、病院事業を行う公益企業型地方独立行政法人は、病院事業及びこれに附帯する業務以外の業務を行ってはならないとされています(地方独立行政法人法(平成 15 年法律第 118 号)第 82 条)。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-2

A市の保健福祉部において病院事業を行っているが、病院の運営業務における個人情報の取扱いには、民間規律と公的規律のいずれが適用されるのか。同部局で介護事業を行っている場合はどうか。

A1-1-2

地方公共団体の機関が行う医療法上の病院の運営業務における個人情報の取扱いについては民間規律(開示請求等に関する規律を除く。以下この項目において同じ。)が適用される(法第 58 条第 2 項第 1 号)ことから、保健福祉部において行っている病院の運営業務における個人情報の取扱いには、民間規律が適用されることとなります。

同部局で行う介護事業については、医療法上の病院の運営業務に当たらない限りにおいて、公的規律が適用されることとなります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-3

A市では、公営企業の病院を設置しているが、当該病院の運営業務に係る個人情報の取扱いには、民間規律と公的規律のいずれが適用されるのか。地方公営企業法上の管理者の有無により、違いが生じるか。

A1-1-3

地方公共団体の機関が行う医療法上の病院の運営業務における個人情報の取扱いについては民間規律(開示請求等に関する規律を除く。以下この項目において同じ。)が適用される(法第 58 条第 2 項第 1 号)ことから、病院事業が公営企業の形態で行われる場合にも、地方公営企業法(昭和 27 年法律第 292 号)上の管理者(同法第 7 条)の有無に関わらず、民間規律が適用されることとなります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-4

A市では、病院事業を行う公営企業と、ガス事業を行う公営企業について、1人の管理者を設置している。この場合、民間規律と公的規律のいずれが適用されるのか。

A1-1-4

地方公共団体の機関が行う医療法上の病院の運営業務における個人情報の取扱いについては民間規律(開示請求等に関する規律を除く(法第 58 条第 2 項第 1 号 )。以下この項目において同じ。)が適用されることから、1 人の管理者が複数の公営企業の管理者となる場合にも、民間規律が適用されるのは病院事業に係る部分のみであり、その他の事業には公的規律が適用されることとなります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-5

地方公共団体の機関の同一の部署において大学の運営に関する業務とそれ以外の業務を行っている場合、個人情報の取扱いは民間規律と公的規律のいずれが適用されるのか。

A1-1-5

地方公共団体の機関において、大学の運営その他の法第 58 条第 2 項第 1 号に該当する業務と、それ以外の業務の両方を行っている場合には、法第 58 条第 2 項第 1 号に該当する業務における個人情報の取扱いについては民間規律(開示請求等に関する規律を除く。)が適用され、その他の業務における個人情報の取扱いについては公的規律が適用されることとなります。これは同一の部署において両業務を行っている場合においても同様です。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-6

地方公共団体又は地方独立行政法人が運営する高等専門学校は、民間規律と公的規律のいずれが適用されるのか。

A1-1-6

地方公共団体が運営する高等専門学校は、国立の高等専門学校と同様、個人情報取扱事業者に該当することとはされておらず、公的規律が適用されることとなります。 地方独立行政法人が運営する高等専門学校は、大学とともに設置されるものであり(地方独立行政法人法第 21 条第 2 号)、その全体が個人情報取扱事業者に該当することから(法第 2 条第 11 項第 4 号及び第 16 条第 2 項第 4 号)、当該高等専門学校を運営する地方独立行政法人の全ての業務について民間規律(開示請求等に関する規律を除く(法第 58 条第 1 項第 2 号 )。)が適用されることとなります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-7

博物館を運営する地方独立行政法人(地方独立行政法人法第 21 条第 6 号、地方独立行政法人法施行令(平成 15 年政令第 486 号)第 6 条第 3 号)が、その業務の一環として試験研究を行う場合、民間規律と公的規律のいずれが適用されるのか。

A1-1-7

地方独立行政法人のうち個人情報取扱事業者に該当するものは、試験研究(地方独立行政法人法第 21 条第1号)を主たる目的とするもの、大学等の設置・管理等(同第 2 号)を目的とするもの、病院事業の経営(同第 3 号チ)を目的とするものに限定されており、博物館(同第 6 号、地方独立行政法人法施行令第 6 条第 3 号)を運営する地方独立行政法人には公的規律が適用されることとなります。

試験研究については、他業との禁止規定が無く、同一の地方独立行政法人が、試験研究と他の業務を行うことも考えられることから、民間規律(開示請求等に関する規律を除く(法第 58 条第 1 項第 2 号 )。以下この項目において同じ。)の適用の対象についても、試験研究を「主たる目的とするもの」とされています。博物館を運営する地方独立行政法人がその業務の一環として試験研究を行う場合は、当該地方独立行政法人が試験研究を「主たる目的」としているのであれば、民間規律が適用されることとなります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-8

病院事業の経営の業務を目的とする地方独立行政法人が、取得する個人情報に関して当該法人を所管する地方公共団体の機関が作成・管理する「個人情報取扱事務登録簿」に利用目的を記載し、これを当該地方公共団体の機関が管理するホームページにおいて公開している場合、法第 21 条第 1 項の「あらかじめその利用目的を公表している場合」に当たるか。

A1-1-8

法第 21 条第 1 項の「公表」とは、個人情報を取り扱う主体が、広く一般に個人情報の利用目的に関する自己の意思を知らせること(不特定多数の人々が知ることができるように発表すること)をいい、公表に当たっては、事業の性質及び個人情報の取扱状況に応じ、合理的かつ適切な方法による必要があります。

病院事業の経営の業務を目的とする地方独立行政法人は「個人情報取扱事業者」として、他方、当該法人を所管する地方公共団体の機関は「行政機関等」として、それぞれ別の主体であることから、一般に、当該法人を所管する地方公共団体の機関が作成・管理する個人情報取扱事務登録簿に当該法人が取り扱う個人情報の利用目的を記載し、当該法人を所管する地方公共団体の機関のホームページにおいて公表することをもって、当該法人が法第 21 条第 1 項に規定する「公表」を行っているとは認められません。

法第 21 条第 1 項については、個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)3-3-3(利用目的の通知又は公表)を参照してください。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-9

地方公共団体又は地方独立行政法人が設置する病院、診療所、大学、試験研究機関(以下、「病院等」という。)が保有する個人情報に係る開示等請求の申請先はどこになるのか。また、審査請求の申請先はどこになるのか。

A1-1-9

病院等が保有する個人情報に係る開示等請求は、当該病院等を運営する地方公共団体の機関(法第 2 条第 11 項第 2 号)又は地方独立行政法人に対して行うこととなります。

例えば、市長部局の一組織である病院等が保有する個人情報に係る開示等請求は、開示請求に係る事務について当該市長から当該病院等の長等への委任が行われていない限り、当該市長に対して行うこととなり、地方公営企業法第 7 条の管理者を設置している公営企業の病院であれば当該管理者に対して行うこととなります。

審査請求については、行政不服審査法(平成 26 年法律第 68 号)第 4 条の特例が定められていない限り、開示等の決定を行った地方公共団体の機関(地方公営企業法第 7 条の管理者を含む。)又は地方独立行政法人に対して行うこととなります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q1-1-10

指定管理者が取り扱う個人情報について、地方公共団体の機関に対し開示請求があった場合、どのように対応すべきか。

A1-1-10

指定管理者が指定管理業務に伴って取り扱う個人情報については、当該個人情報が当該指定管理者にとっての保有個人データ(法第 16 条第 4 項)に該当する場合、法第 33 条の規定に基づき個人情報取扱事業者としての開示に係る規律の適用があると同時に、当該個人情報が指定管理者の指定を行った地方公共団体の機関にとっての保有個人情報に該当する場合には、法第 76 条その他の規定に基づく開示等請求の対象となるため、あらかじめ開示等請求があった場合の対応を明確にしておく必要があるものと考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

2 定義等

2-1 行政機関等
Q2-1-1

公有地の拡大の推進に関する法律(昭和 47 年法律第 66 号)第 10 条の規定に基づき設立された「土地開発公社」は、法第 2 条第 11 項第 2 号の「地方公共団体の機関」に含まれるか。

A2-1-1

「土地開発公社」は、法第 2 条第 11 項第 2 号の「地方公共団体の機関」に含まれません。なお、土地開発公社が個人情報データベース等を事業の用に供している場合には、個人情報取扱事業者に当たり(法第 16 条第 2 項)、個人情報の取扱いについて法第 4 章の規定を遵守する必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q2-1-2

教育委員会が所管する公立学校については、各学校が法第 2 条第 11 項第 2 号の「地方公共団体の機関」に当たるのか。

A2-1-1

教育委員会が所管する公立学校については、個々の学校自体が法第 2 条第11 項第 2 号の「地方公共団体の機関」に該当するものではなく、当該学校を所管する教育委員会が、法第 2 条第 11 項第 2 号の「地方公共団体の機関」に該当します。
(令和 4 年 4 月追加)

2-2 個人情報
Q2-2-1

死者に関する情報のうち生存する遺族の個人情報に該当する情報について、法施行条例で特定の情報がこれに該当する旨を定めることはできるか。

A2-2-1

死者に関する情報のうち、生存する特定の個人に関する情報であって、当該生存する特定の個人を識別することができる情報は、当該生存する特定の個人を本人とする「個人情報」(法第 2 条第 1 項)に当たります。死者に関する情報が生存する特定の個人を本人とする「個人情報」に該当するか否かは、法の規定に基づき判断する必要があるため、法施行条例にそうした規定を設けることは認められません。一方で、死者に関する情報の取扱いについて、個人情報保護制度とは別の制度として、条例で定めることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q2-2-2

行政機関等内部の異なる部署が独自に取得した個人情報を部署ごとに設置されているデータベースにそれぞれ別々に保管している場合において、ある部署のデータベースと他の部署のデータベースの双方を取り扱うことができないときには、「容易に照合することができ」(法第 2 条第 1 項第 1 号)ないといえるか。

A2-2-2

法第 2 条第 1 項第 1 号における「他の情報と容易に照合することができ」とは、通常の業務における一般的な方法で、他の情報と容易に照合することができる状態をいうところ、他の行政機関等や事業者への照会を要する場合等であって照合が困難な状態は、一般に、「容易に照合することができ」ない状態であると考えられます。

例えば、同一の機関内の異なる部署が独自に取得した個人情報を部署ごとに設置されているデータベースにそれぞれ別々に保管している場合において、双方の部署やこれらを統括すべき立場の者等が、規程上・運用上、双方のデータベースを取り扱うことが厳格に禁止されていて、特別の費用や手間をかけることなく、通常の業務における一般的な方法で双方のデータベース上の情報を照合することができない状態である場合は、「容易に照合することができ」ない状態であると考えられます。

他方、利用目的が異なっていても、双方の部署の間で、通常の業務における一般的な方法で双方のデータベース上の情報を照合することができる状態である場合は、「容易に照合することができ」る状態であると考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

2-3 保有個人情報
Q2-3-1

行政機関等において、ある個人から当該個人の情報に関するアクセスログの開示請求を受けたが、当該アクセスログは保有個人情報に該当するのか。

A2-3-1

法第 2 条第 1 項各号を踏まえ、まず、当該アクセスログが個人情報に該当するか否かについて整理して確認する必要があります。例えば、当該アクセスログのみでは特定の個人を識別することができない場合であっても、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる場合、当該アクセスログは個人情報に該当します。

その上で、当該アクセスログが法第 60 条第 1 項の保有個人情報に該当する場合は、法に基づく開示請求の対象となります。

なお、開示請求手続きにおいては、当該保有個人情報が、法第 78 条第 1 項に規定する不開示情報に該当しないかどうかという点や、保有個人情報(行政機関情報公開法第 5 条、独立行政法人等情報公開法第 5 条又は情報公開条例に規定する不開示情報を専ら記録する行政文書等に記録されているものに限る。)のうち、まだ分類その他の整理が行われていないもので、同一の利用目的に係るものが著しく大量にあるため、その中から特定の保有個人情報を検索することが著しく困難であるものは、法第 5 章第 4 節(第 4 款を除く。)の規定の適用については、行政機関等に保有されていないものとみなされる(法第 124 条第 2 項)という点について併せて確認する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q2-3-2

行政機関等が個人情報をクラウドサービス上で利用する場合、法第 60 条第 1 項における「行政機関等が保有している」に該当するのか。

A2-3-2

「行政機関等が保有している」とは、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成 11 年法律第 42 号。以下「情報公開法」という。)における行政文書の保有の概念と同様であり、すなわち、職務上作成し、又は取得した個人情報について事実上支配している(当該個人情報の利用、提供、廃棄等の取扱いについて判断する権限を有している)状態をいいます。したがって、例えば、行政機関等が個人情報をクラウドサービス上で利用しており、物理的には当該個人情報が当該クラウドサービスを提供する事業者の管理するサーバ上に保管されている場合であっても、「行政機関等が保有している」に該当すると考えられます(事務対応ガイド 3-2-3(1)参照)。
(令和 6 年 3 月追加)

2-4 その他
Q2-4-1

行政機関等が運営する病院(法第 58 条に掲げる者及び業務に当たる場合に限る。)は、法第 16 条第 8 項の「学術研究機関等」に該当するのか。

A2-4-1

病院・診療所等の患者に対し直接医療を提供する事業者は法第 16 条第 8 項の「学術研究機関等」に該当しませんが、例えば、大学附属病院のように患者に対して直接医療を提供する機関であっても学術研究機関等である大学法人の一部門である場合には、当該大学法人全体として「学術研究」を主たる目的とする機関として、「学術研究機関等」に該当します。

なお、学術研究機関等による個人情報の取扱いに係る例外規定(法第 18 条第 3 項第 5 号及び第 6 号、第 20 条第 2 項第 5 号及び第 6 号、第 27 条第 1 項第 5 号、第 6 号及び第 7号等)の適用に当たっては、対象となる個人情報又は個人データが「学術研究目的」で取り扱われる必要があるため、大学附属病院を含む大学における個人情報又は個人データの取扱いであっても、「学術研究目的」に該当しない場合には、これらの例外規定の対象にはなりません。

Q2-4-2

同和地区出身であることは、要配慮個人情報に該当するのか。

A2-4-2

「要配慮個人情報」とは、本人の人種、信条、社会的身分や、不当な差別や偏見その他の不利益が生じないようにその取扱いに特に配慮を要する記述が含まれる個人情報です。

このうち、「社会的身分」とは、ある個人にその境遇として固着していて、一生の間、自らの力によって容易にそれから脱し得ないような地位を意味するところ、同和地区出身であることは、「社会的身分」に当たると考えられ、要配慮個人情報に該当します。
(令和 6 年 3 月追加)

3 個人情報等の取扱い

3-1 安全管理措置
Q3-1-1

行政機関等から個人情報取扱事業者に対して、保有個人情報の取扱いの委託に伴う提供を行う場合に、委託先での個人情報の取扱いに関して行政機関等として留意すべき点は何か。

A3-1-1

保有個人情報の取扱いの委託に伴う提供を受けた委託先は、委託された業務の範囲内でのみ当該個人情報を取り扱わなければなりません。そのため、提供を受けた個人情報について、委託の内容と関係のない自社の営業活動等のために利用する、委託の内容と関係のない匿名加工情報の作成を行った上で第三者に提供する、委託された業務の範囲外で統計情報に加工した上で作成された統計情報を自社のために用いる等の利用・提供は、委託された業務の範囲外での個人情報の取扱いであり、許容されません。

委託元の行政機関等としては、委託先において、委託された業務の範囲外での個人情報の取扱いが行われないよう、行政機関等における安全管理措置の内容を踏まえた委託先選定基準の整備及び当該基準に従った適切な委託先の選定を行い、委託先における個人情報の取扱いの内容を契約条項等で確認の上、適切な監督を行う必要があります(法第 66 条第 1 項、事務対応ガイド 4-3-1-1(3)及び 4-8-9 参照)。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-1-2

指定管理者は、指定管理業務として行う個人情報の取扱いについて、安全管理措置義務を負うか。

A3-1-2

指定管理者が公の施設の管理の業務を行う場合における個人情報の取扱いについては、行政機関等と同様の安全管理措置義務を負うため(法第 66 条第 2 項第 2 号)、事務対応ガイド 4-8「(別添)行政機関等の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針」を参考として、適切な管理に関する定めを整備するとともに、保有個人情報の漏えい等が生じた場合に本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、事務又は業務の規模及び性質、保有個人情報の取扱状況(取り扱う保有個人情報の性質及び量を含む。)、保有個人情報を記録した媒体の性質等に起因するリスクに応じて、個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講ずる必要があります。

なお、当該指定管理者が個人情報取扱事業者に該当する場合には、上述の安全管理措置義務に加えて、個人データに関する安全管理措置を講ずべき義務(法第 23 条)も負うこととなります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-1-3

指定管理者が行う公立病院の運営の業務について、法第 66 条第 2 項第 2 号の適用があるか。

A3-1-3

地方公共団体の機関が行う病院の運営の業務については、原則として法第66 条第 1 項の適用はないため、安全管理措置について公的規律の適用があるものではありません(法第 125 条第 1 項)。このことは、地方公共団体の機関が病院の運営の業務を指定管理者に行わせる場合においても同様となります。よって、指定管理者が行う病院の運営の業務については、原則として法第 66 条第 2 項第 2 号の適用はありません。なお、この場合であっても、指定管理者は、個人情報取扱事業者に当たる場合には、法第 23 条に規定する安全管理措置を講じる必要があります。

もっとも、地方公共団体の機関が行う病院の運営の業務のうち政令第 19 条第 2 項で定める業務については、法第 66 条第 2 項第 4 号により安全管理措置についての公的規律が準用されることから、同様に指定管理者が当該業務を行う場合においては、法第 66 条第 2項第 2 号の適用があります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q3-1-4

事務対応ガイド 4-8-9(3)において「少なくとも年 1 回以上、原則として実地検査により確認する」とあるが、当該実地検査はどのように行えば良いか。

A3-1-4

委託先に対する適切な実地検査の方法や項目は、委託する業務や個人情報の内容等によって異なると考えられるところ、事務対応ガイド等の記載を参照の上、個別の事案ごとに法の規定に照らした委託に係る個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置を講ずる必要があります。

その上で、事務対応ガイド 4-8「(別添)行政機関等の保有する個人情報の適切な管理のための措置に関する指針」は、行政機関等の保有する個人情報の安全管理のために必要かつ適切な措置として最小限のものを示すものであり、委託先に対する実地検査については、個人情報の管理の状況等について少なくとも年 1 回以上の確認をすることとしています。当該実地検査は、1 つの委託業務につき年 1 回以上行うことが必要です。

指針において実地検査を求めているのは、契約等により定められた管理が実際に行われているかを目視等により確認する必要があるとの趣旨であることから、委託先が遠隔地にある等の理由により、ある年において、現に委託先に赴くことが難しいような事情が生じた場合には、例えばテレビ通話や写真等で管理の現況を確認する方法によることも可能です。
(令和 6 年 3 月追加)

3-2 取得及び保有に関する制限
Q3-2-1

要配慮個人情報の取得制限を法施行条例で規定することは可能か。

A3-2-1

要配慮個人情報の取得を制限することは、行政機関等において要配慮個人情報の取扱いについて特別の制限を設けていない法の規律に抵触する規律を定めるものであり、個人情報保護やデータ流通について直接影響をあたえる事項に当たります。一方で、法はこのような規律を定めることについて委任規定を置いていません。よって、要配慮個人情報の取得制限を法施行条例で規定することは認められません。

他方、法は、行政機関等における要配慮個人情報の取得について特別の規定を設けていませんが、行政機関等において取り扱う個人情報全般について、その保有は法令(条例を含む。)の定める所掌事務又は業務の遂行に必要な場合に限定することとし(法第 61 条第1 項)、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を保有してはならないこととしている(同条第 2 項)ほか、法第 63 条(不適正な利用の禁止)、法第 64 条(適正な取得)等の定めを置いており、要配慮個人情報の取扱いに当たってもこれらの規定を遵守する必要があります。

また、行政機関の長等の安全管理措置義務(法第 66 条)に関しても、求められる安全管理措置の内容は、保有個人情報の漏えい等が生じた場合本人が被る権利利益の侵害の大きさを考慮し、保有個人情報の取扱い状況(取り扱う保有個人情報の性質及び量を含む。)等に起因するリスクに応じて、必要かつ適切な内容とする必要があり、行政機関内部における安全管理体制の構築に当たって、取り扱う保有個人情報が要配慮個人情報に当たることを勘案することは考えられます。
(令和 4 年 4 月追加)

Q3-2-2

不要な保有個人情報の消去を法施行条例で規定することは可能か。

A3-2-2

法においては、個人情報の保有は法令(条例を含む。)の定める所掌事務又は業務の遂行に必要な場合に限ることとされており(法第 61 条第 1 項)、また、利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報を保有してはならないこととされています(同条第 2 項)。不要な保有個人情報の消去に係る規定を法施行条例で設けた場合には、法の規律と実質的に同様の内容を規律することになることから、このような規定を法施行条例で設けることは認められません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q3-2-3

地方自治法第 252 条の 2 の 2 に規定する協議会における保有個人情報の取扱いについて、どのように考えればよいか。

A3-2-3

地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号)第 252 条の 2 の 2 に規定する協議会は、法人格を持たず、固有の財産又は職員を有しないとされています。したがって、その担任事務に関して取り扱われる個人情報は、関係地方公共団体の機関それぞれの保有個人情報として、法第 5 章の規律に基づき、適切に処理することが必要です。
(令和 6 年 3 月追加)

3-3 提供の制限
Q3-3-1

債権管理条例を制定し、債権の管理に関する個人情報を他の地方公共団体の債権の管理のために相互に目的外利用・提供できる旨の規定を定めることは、法上可能か。

A3-3-1

法と異なる法益保護の観点から定められている条例において、個人情報保護制度とは別に必要な措置を求めることは可能と考えられますが、個人情報保護制度一般に関して、法に規定する個人情報保護やデータ流通に直接影響を与えるような事項についての独自の規定や、法と重複する内容の規定を置くことは認められません。

また、法第 69 条第 1 項の「法令」には、委任条例以外の条例は含まれないため、一般的に、債権管理条例における個人情報の取得、利用、提供等の規定のみを根拠として利用目的以外の目的のために利用・提供することはできず、想定される恒常的な利用・提供について、法第 61 条第 1 項の規定に基づき利用目的として特定しておくか、臨時的な利用・提供の場合であっても、法第 69 条第 2 項各号の要件を満たしている必要があると考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-3-2

敬老会や成人式を開催するために、地方公共団体から自治会の代表者に対象者の名簿を提供することは可能か。また、社会福祉協議会が実施している事業のために、地方公共団体から名簿を提供することは可能か。

A3-3-2

行政機関の長等は、保有個人情報を利用目的(法第 61 条第 1 項の規定により特定されたもの。同条第 3 項の規定の範囲内で利用目的を変更する場合を含む。)のために利用・提供することができます。利用目的以外の目的のために利用・提供することができる場合は、法令に基づく場合のほか、法第 69 条第 2 項各号に該当し、かつ本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがない場合に限られます。なお、法第 69 条第2 項は、当該利用・提供が臨時的に行われる場合に関する規定であり、当該利用・提供が恒常的に行われる場合には、前述のとおり法第 61 条第 1 項の規定により特定され、又は同条第 3 項の規定により変更された利用目的の範囲内で行う必要があります(事務対応ガイド 4-2-1(3)参照)。

自治会又は社会福祉協議会の構成員に対する名簿の提供について、恒常的に行うことが想定される場合は、法第 61 条第 1 項に基づきあらかじめ利用目的として特定するか、同条第 3 項の規定に従い利用目的の変更を行うことで、当該情報の提供が可能となります。

また、自治会又は社会福祉協議会に対して、臨時的に利用目的以外の目的のために提供を行う場合は、自治会及び社会福祉協議会の構成員は個人情報取扱事業者に該当し得る(国の機関、地方公共団体、独立行政法人等、地方独立行政法人に該当する場合を除く。)ところ、当該提供の可否については、法第 69 条第 2 項第 4 号の該当性を検討することとなります。その上で、同号の該当性は、保有個人情報の内容や当該保有個人情報の利用目的等を勘案して、行政機関の長等が個別に判断する必要があります。

なお、同号のうち「特別の理由があるとき」とは、本来行政機関等において厳格に管理すべき個人情報について、行政機関等以外の者に例外として提供することが認められるにふさわしい要件として、個人情報の性質、利用目的等に即して、法第 69 条第 2 項第 3 号における「相当の理由」よりも更に厳格な理由が必要であるとする趣旨です(事務対応ガイド 4-5-2(4)参照)。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-3-3

地方公共団体から民生委員・児童委員へ、活動に必要な個人情報を提供することは可能か。

A3-3-3

保有個人情報の利用・提供の基本的な規律についてはQ3-3-2のとおりであり、保有個人情報を利用目的の範囲内で民生委員・児童委員に利用させる、又は提供することができます。

民生委員・児童委員に対して、保有個人情報を臨時的に利用目的以外の目的のために利用させる、又は提供を行う場合には、法令に基づく場合のほか、民生委員・児童委員が、指定都市及び中核市にあっては当該市の、その他の市町村にあっては都道府県の特別職の地方公務員であるため、民生委員法(昭和 23 年法律第 198 号)や児童福祉法(昭和 22 年法律第 164 号)に基づく業務に必要な限度で提供に係る保有個人情報を利用し、かつ、当該保有個人情報を利用することについて相当の理由があるときには、情報提供を行う地方公共団体の機関と情報提供を受ける民生委員・児童委員との関係や民生委員・児童委員が行う事務の内容に応じて、法第 69 条第 2 項第 2 号又は同項第 3 号を根拠に保有個人情報を利用させる、又は提供を行うことが考えられます。

また、同号における「相当の理由があるとき」とは、行政機関等の恣意的な判断を許容するものではなく、少なくとも、社会通念上、客観的にみて合理的な理由があることが求められます。相当の理由があるか否かは、保有個人情報の内容や当該保有個人情報の利用目的等を勘案して、行政機関の長等が個別に判断することとなりますが、例外的に利用目的以外の目的のための利用・提供が許容される場合について規定した趣旨から、例外としてふさわしい理由であることが求められます(事務対応ガイド 4-5-2(3)参照)。

以上を踏まえ、実際の提供の適否については、保有個人情報の内容、当該保有個人情報の利用目的、提供先における必要性等を勘案して、利用目的のための提供か利用目的以外の目的のための提供かを含め、地方公共団体において適切に判断する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-3-4

法第 69 条第 2 項第 1 号の本人への提供について、口頭での求めに応じて提供することは可能か。またその際、代理人が本人の保有個人情報を提供するように求めてきた場合、当該代理人による手続は可能か。

A3-3-4

口頭での求めに応じて、本人に対して当該保有個人情報を提供することは可能です。なお、法第 69 条第 2 項各号に基づいて保有個人情報を提供する場合には、「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれ」(法第 69 条第 2 項柱書ただし書)がないかについても検討する必要があります。

実際の提供を行う際の具体的な運用については、法に特段の定めがないことから代理人による手続を認めることも妨げられません。この場合、当該代理人の本人確認や資格確認等の具体的な手続を含めて、法の趣旨を踏まえ、各行政機関等において適切に判断する必要があります。なお、代理人による手続の場合も、その判断にあたっては上述の「本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれ」(法第 69 条第 2 項柱書ただし書)がないかについて十分に確認する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-3-5

法第 69 条第 2 項第 1 号に基づき保有個人情報の提供を行う場合、地方公共団体の機関において法第 27 条第 2 項に規定するオプトアウトに準じる方法(例:法施行条例に規定)により本人の同意を取得したとすることは許容されるか。

A3-3-5

前提として、地方公共団体の機関には、法第 58 条第 2 項第 1 号に定める業務を行う場合を除き、オプトアウトによる第三者提供に関する規定(法第 27 条第 2 項)は適用されません。

よって、法施行条例において、法第 27 条第 2 項の規定の適用対象に行政機関等を加えたり、同項の規定を行政機関等に準用する規定を設けたりするなど、法の委任に基づかずに個人情報保護やデータ流通に直接影響を与えるような規定を定めることは許容されません。また、個人情報保護に関する一般的な規律として独自にオプトアウトによる第三者提供に関する規定を設けることは、法の委任に基づかず、個人情報保護やデータ流通に直接影響を与えるものであるため、許容されません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-3-6

行政機関等から裁判所に対する保有個人情報を含む資料の提供については、法第 69 条第 2 項第 3 号又は同項第 4 号のどちらに該当するか。

A3-3-6

裁判所は、法第 69 条第 2 項第 3 号における「他の行政機関、独立行政法人等、地方公共団体の機関又は地方独立行政法人」には該当しません。

行政機関等から裁判所に対する保有個人情報の提供の根拠については、個別具体的に判断する必要がありますが、民事訴訟法(平成 8 年法律第 109 号)第 223 条第 1 項に基づく提出義務等の法第 69 条第 1 項の「法令に基づく場合」のほか、訴訟追行のために必要な場合であるとして法第 69 条第 2 項第 4 号の「特別の理由があるとき」等が、該当し得るものとして考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-3-7

意思表示が困難な高齢者等要介護者の介護情報等の個人情報を、入所予定介護施設や当該要介護者の親族に提供することは、法第 69 条第 2 項第 4 号の「本人以外のものに提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当するとして、利用目的以外の目的のための外部提供が許容されるか。

A3-3-7

法第 69 条第 2 項第 4 号の「本人以外のものに提供することが明らかに本人の利益になるとき」については、本人の生命、身体又は財産を保護するために必要がある場合や、本人に対する金銭の給付又は栄典の授与等のために必要がある場合などがこれに当たります。

意思表示が困難な高齢者等要介護者の介護情報等の保有個人情報について、介護手続又は介護作業のため等、当該要介護者の生命、身体又は財産の保護のために必要な範囲で入所予定介護施設や当該要介護者に係る給付手続等を行う親族に提供することは、「本人以外のものに提供することが明らかに本人の利益になるとき」に当たり、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められない限り、利用目的以外の目的のための外部提供が許容されると考えられます。

なお、保有個人情報の介護手続又は介護作業のための利用又は外部提供が恒常的に行われる場合には、そのような利用又は外部提供が可能となるように利用目的を特定しておく必要があります。

Q3-3-8

同一の地方公共団体の異なる機関間における保有個人情報の提供について制限はあるか。

A3-3-8

同一の地方公共団体の異なる機関間における保有個人情報の提供が行われる場合であって、当該保有個人情報について、法令に基づかずに、かつ、利用目的以外の目的のために提供する場合は、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがなく、かつ法第 69 条第 2 項第 3 号の要件を満たす必要があります。なお、法第 69 条第 2 項第 3 号の「地方公共団体の機関」には議会が含まれるため(法第 2 条第 11 項第 2 号)、地方公共団体の機関が法令に基づかずに保有個人情報を利用目的以外の目的のために議会に提供する場合も、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがなく、かつ法第 69 条第 2 項第 3 号の要件を満たす必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q3-3-9

地方公共団体の同一の機関内に、病院の運営の業務を行っている部署と他の業務を行っている部署がある場合であって、当該地方公共団体の機関と同一地方公共団体における他の地方公共団体の機関との間ではなく、当該病院の運営の業務を行っている部署において取得した個人情報を他の部署で取り扱うとき、又は他の部署で取得した個人情報を当該病院の運営の業務を行っている部署で取り扱うときに、個人情報のやり取りについてそれぞれどのような法の適用関係になるか。

A3-3-9

地方公共団体の機関が行う病院の運営における個人情報の取扱いについては、民間規律(開示請求等に関する規律を除く。)が適用されますが(法第 58 条第 2 項第 1 号及び法第 125 条第 1 項)、病院の運営業務を行っていることをもって「地方公共団体の機関」(法第 2 条第 11 項第 2 号)から除かれるものではないため、地方公共団体の同一の機関内における他の部署への個人情報の提供は、ひとつの「地方公共団体の機関」内における利用に当たります。

病院の運営の業務を行っている部署、他の部署のそれぞれに関する法の適用関係は以下のとおりです。

  1. 病院の運営の業務を行っている部署において取得した個人情報を同じ機関内部の他の部署で取り扱う場合

    病院の運営の業務を行っている部署において取得した個人情報を同じ機関内部の他の部署で取り扱う場合のやり取りは、法第 27 条の第三者提供には当たりませんが、法第 18 条の利用目的による制限の規律が適用されます。

    こうした個人情報の取扱いが行われる場合には、法第 17 条の規定により、同じ機関内部のどのような他の部署が、どのような利用目的で利用するのか本人が想定できる程度に具体的に特定を行う必要があります。その上で、特定された利用目的の達成に必要な範囲を超えて個人情報の取扱いが行われる場合には、法第 18 条の規定により、あらかじめ本人の同意を得る必要があります。

  2. 同じ機関内部の他の部署で取得した個人情報を病院の運営の業務を行っている部署で取り扱う場合

    同じ機関内部の他の部署で取得した保有個人情報を病院の運営の業務を行っている部署で取り扱う場合のやり取りは、法第 69 条の定めに従って行われることが必要です。

    • ① 利用目的の範囲内で利用を行う場合には、法第 69 条の規定により利用が制限されることはありません。
    • ② 利用目的以外の目的で利用を行う場合には、法令に基づく場合を除き、法第 69 条第 2 項第 2 号に基づいて利用が行われる必要があります。

(令和 4 年 4 月追加)

3-4 漏えい等の報告等
Q3-4-1

事務対応ガイド 4-4-1(7)において、報告期限の起算点となる「知った」時点について、「行政機関等のいずれかの部署が当該事態を知った時点を基準」とありますが、具体的には部署内の誰が認識した時点を基準とするのか。また、法第 68 条第 2 項に基づき本人への通知を行う場合、電話で行うことは可能か。

A3-4-1

報告期限の起算点となる「知った」時点については、個別の事案ごとに判断するものですが、部署内のある従事者が報告対象事態を知った時点で「部署が知った」と考えられます。この点、保有個人情報の不正な持ち出しの事案においては、不正な持ち出しを行った従事者等を除いた上で判断することとなります。

また、本人への通知は、業務の性質及び保有個人情報の取扱状況に応じ、通知すべき内容が本人に認識される合理的かつ適切な方法によらなければなりません。電話による通知も妨げられないと考えられますが、本人にとって分かりやすい形となるよう、適切に対応する必要があります。この場合、本人に通知を行った日時等について記録することが望ましいと考えられます。

なお、本人が口頭で通知を受けた内容を事後的に確認できるようにする観点から、必要に応じて書面又は電子メール等による通知を併用することが望ましいと考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q3-4-2

行政機関等が委託した業務に関し、委託先の事業者(個人情報取扱事業者)の社内において当該委託に係る個人データの紛失が発生した場合、漏えい等の報告義務はどのように考えればよいか。

A3-4-2

行政機関等が保有個人情報の取扱いを委託している委託先が、当該委託された保有個人情報であって個人データに該当するものを紛失し、それが「滅失」に該当する場合(法第 26 条)、委託元である行政機関等と委託先である個人情報取扱事業者の双方が当該情報を取り扱っていることになるため、それぞれ報告の対象となる事態に該当する場合には、原則として委託元と委託先の双方が報告する義務を負います。この場合、委託元である行政機関等については法第 68 条第 1 項の規定に基づき報告義務を負い、委託先の個人情報取扱事業者については法第 26 条第 1 項の規定に基づき報告義務を負うこととなります。

なお、委託先が個人情報取扱事業者の場合、報告義務を負っている委託元に当該事態が発生したことを通知したときは、委託先は報告義務を免除されることとなります(法第 26 条第 1 項ただし書、事務対応ガイド 4-4-1(6)参照)。
(令和 6 年 3 月追加)

4 個人情報ファイル

4-1 個人情報ファイルの事前通知
Q4-1-1

地方公共団体の機関が個人情報ファイルを作成する場合に、当該地方公共団体内部において事前通知を要する等の手続を法施行条例で定めることは可能か。

A4-1-1

個人情報ファイルの作成に当たり、地方公共団体の内部管理として、地方公共団体内部において事前通知を求める制度を法施行条例で定めることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

4-2 個人情報ファイル簿の作成・公表
Q4-2-1

本人の数が政令で定める数未満の個人情報ファイルについて、個人情報ファイル簿を作成することは可能か。

A4-2-1

本人の数が 1,000 人未満の個人情報ファイルについては、個人情報ファイル簿の作成・公表義務の対象外とされていますが(法第 74 条第 2 項第 9 号、第 75 条第 2 項第 1 号及び政令第 20 条第 2 項)、本人の数や個人情報ファイルに含まれる保有個人情報の性質等を踏まえて個人情報ファイル簿を作成・公表することで特定の個人が識別される場合など、法の趣旨に反しない限り、本人の数が政令で定める数未満の個人情報ファイルについて、作成・公表を行うことは妨げられません。

ただし、本人の数が 1,000 人未満の個人情報ファイルは、行政機関等匿名加工情報の提案募集の対象外です。

Q4-2-2

廃止した事務に関する個人情報ファイルについても、個人情報ファイル簿の作成・公表は必要か。

A4-2-2

法第 75 条第 1 項において個人情報ファイル簿の作成・公表義務が課されているのは「当該行政機関の長等の属する行政機関等が保有している個人情報ファイル」であることから、個人情報を利用する事務自体が廃止されていたとしても、当該個人情報ファイルを保有している場合は、個人情報ファイル簿の作成・公表の対象となります。

また、政令第 21 条第 4 項により、個人情報ファイルの保有をやめたときには、公表している個人情報ファイル簿から、当該個人情報ファイルについての記載を遅滞なく削除する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q4-2-3

個人情報ファイル簿は、データベース又はテーブルごとに作成する必要があるか。

A4-2-3

複数のデータベース又はテーブル上に記録された保有個人情報であっても、それらが同一の業務の目的を達成するために利用されるものであり、かつ、当該複数のデ ータベース又はテーブル間で氏名、住所や個人識別符号等の特定の個人を識別することができる情報を用いて他の保有個人情報を検索することが可能な場合、これらの複数のデータベース又はテーブルに記録される保有個人情報を含む情報の集合物を 1 つの個人情報ファイルとして捉え、1 つの個人情報ファイル簿を作成することも可能です。紙の台帳等として作成されている個人情報ファイルにおいても同様です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q4-2-4

個人情報ファイル簿は、年度ごとに作成する必要があるか。

A4-2-4

Q4-2-3の観点から、必ずしも年度ごとの個人情報ファイル簿を作成する必要はなく、一定の事務の目的を達成するために特定の保有個人情報を電子計算機を用いて検索することができるように体系的に構成したもの、又は一定の事務の目的を達成するために氏名、生年月日、その他の記述等により特定の保有個人情報を容易に検索することができるように体系的に構成した個人情報ファイルであれば、複数年度にわたる当該ファイルについて、1 つの個人情報ファイル簿として作成することは可能です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q4-2-5

個人情報ファイル簿における本人の数の計上について、どのように考えればよいか。

A4-2-5

法第 74 条第 2 項第 9 号の「本人」とは、「他の個人の氏名、生年月日その他の記述等によらないで検索し得る者に限」ります。例えば、個人Aに着目してAの個人情報を記録したファイルに、これと併せて個人Bの情報が記録されている場合、当該個人情報ファイルに記録されているBの個人情報が、Bの氏名、生年月日その他の記述等では検索することができない場合は、Bについては法第 74 条第 1 項第 4 号の本人としての記録範囲に該当せず、同条第 2 項第 9 号の「本人の数」には含まれません(事務対応ガイド 5-1-1(3)④参照)。

上記の定義を踏まえ、計上すべき「本人」を判断することになります。

また、本人の数の計上方法として個人情報ファイルに含まれる本人が当該ファイルの中で重複して出てくる場合は、名寄せをした上で人数を計上します。
(令和 6 年 3 月追加)

Q4-2-6

政令第 21 条第 5 項に規定する、個人情報ファイル簿の行政機関等の事務所への備え付けの方法について、紙媒体で作成した個人情報ファイル簿を事務所に備え置く方法以外に、どのような方法が考えられるか。

A4-2-6

政令第 21 条第 5 項に規定する、個人情報ファイル簿の行政機関等の事務所への備え付けの方法は、紙媒体を備え置くほか、例えば、事務所に設置された電子端末等において個人情報ファイル簿を電子データで閲覧できるようにする等、閲覧を希望する者が閲覧可能な環境を整備することが考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q4-2-7

同一地方公共団体内の異なる機関の個人情報ファイル簿について、当該地方公共団体内の特定の部局が集約して備え置くことは可能か。

A4-2-7

法第 75 条第 1 項の規定により作成・公表する個人情報ファイル簿については、政令第 21 条の規定により行政機関等が保有している個人情報ファイルを通じて一の帳簿とすることとされているところ、地方公共団体の機関ごとに作成・公表することが求められます。

なお、機関ごとに作成・公表した個人情報ファイル簿を、事実上知事部局等で更に集約した形で公表することは妨げられません。
(令和 6 年 3 月追加)

5 開示、訂正及び利用停止

5-1 開示請求の客体
Q5-1-1

開示対象となる保有個人情報の記録媒体である行政文書等について、法施行以降に保有を開始した行政文書等に限る等法施行条例で限定することは可能か。

A5-1-1

開示対象となる保有個人情報の記録媒体である行政文書等について、法施行以降に保有を開始した行政文書等に限定する等法律で規定する場合以外の制限を法施行条例で定めることは、法の保護範囲を狭めることとなり認められません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-1-2

戸籍及び除かれた戸籍の正本及び副本並びに戸籍法第 48 条第 2 項に規定する書類に記録されている保有個人情報について、法第 76 条に基づく開示請求が行われた場合、どのように対応することとなるか。

A5-1-2

戸籍法(昭和 22 年法律第 224 号)のように各個別法において、ある一定の保有個人情報について法第 5 章第 4 節の適用を除外する旨の定めがあり(戸籍法第 129条)、開示請求の対象外となっている場合には、それぞれその旨を教示するとともに、他の法令に基づく開示制度等がある場合(戸籍法第 10 条第 1 項、第 12 条の 2 等)には、当該他の法令について教示するなど適切に情報提供を行う必要があります。その上で、法に基づく開示請求が行われた場合は、同節が適用除外となっていることを理由に不開示決定を行うこととなります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-1-3

死者に関する情報について、遺族から法第 76 条に基づく開示請求があった場合、当該情報を開示できるか。

A5-1-3

死者に関する情報は、当該情報が同時に生存する個人に関する情報であり、かつ、当該情報に含まれる氏名、生年月日その他の記述等により生存する特定の個人を識別することができる場合(他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなる場合を含む。)に限り、その生存する個人の「個人情報」に該当します。

したがって、死者に関する情報については、開示請求者が遺族であることや、相続手続のために必要であるとの理由のみで、遺族等による開示請求の対象となるものではなく、死者に関する情報が同時に遺族等の生存する個人に関する情報であって、当該生存する個人を識別することができる場合に限り、当該生存する個人にとって「個人情報」に該当するものであり、さらに当該生存する個人の自己を本人とする「保有個人情報」に該当する場合においては、当該生存する個人による開示請求の対象となります。

死者に関する情報が、同時に生存する個人の「個人情報」に該当するか否かについては、当該情報の内容、各行政機関等において保有する他の情報、当該他の情報と容易に照合することの可否等も踏まえて、個別具体的な事案に即して判断する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

5-2 開示請求の方法
Q5-2-1

開示請求書の提出を開示請求者本人が直接窓口で提出するものとする等、開示請求書の提出方法について法施行条例により独自の制限を設けることは可能か。

A5-2-1

開示請求書の提出方法を窓口での提出に限定する等、法で規定されている開示請求の方法を制限することは、開示請求権について法に定めの無い制限を課すものであることから、そのような規定を法施行条例で定めることは認められません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-2-2

地方独立行政法人に対する開示請求、訂正請求及び利用停止請求の受付場所に加えて、当該地方独立行政法人が定める場所のほか、当該地方独立行政法人の設立団体である地方公共団体の機関を定めることは可能か。

A5-2-2

地方独立行政法人については、地方公共団体の機関とは別に、実施主体として開示請求等に関する事務を行う必要があります。

その上で、地方独立行政法人に対する開示請求について、物理的な窓口を設立団体である地方公共団体の機関にも置くことは、地方独立行政法人に対する開示請求権の行使の保障につながるものであり、法第 12 条第 2 項に基づく措置の一環として可能です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-2-3

財産区に対する開示請求を行う場合、その請求先についてどのように考えればよいか。

A5-2-3

財産区は固有の執行機関を持たず、財産区の権能は、その一部に財産区がある市町村又は特別区の長及び議会が行使することとされていることから、開示請求は財産区の管理者である市町村又は特別区の長に対して行うこととなります。また、開示決定等についても同様に考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-2-4

電子メールによる開示請求及び開示の実施を行うことは可能か。また、オンラインによる開示請求における本人確認については、電子証明書による方法に限定されるか。

A5-2-4

オンラインによる開示請求については、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成 14 年法律第 151 号。以下「デジタル手続法」という。)第 3 条第 8 号の申請等に該当し、同法第 6 条第 1 項において、主務省令で定める電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるとされているため、「電子メール」を使用する方法が当該方法に該当するかを検討する必要があります。

電子情報処理組織の具体的な定義について、個人情報保護委員会の所管する法令に係る情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律施行規則(平成 26 年特定個人情報保護委員会規則第 2 号)(以下「デジタル手続法施行規則」という。)第 3 条では、「行政機関等の使用に係る電子計算機と申請等をする者の使用に係る電子計算機であって当該行政機関等の定める技術的基準に適合するものとを電気通信回線で接続した電子情報処理組織」と定めています。したがって、「電子メール」が当該定義に該当するかは、各行政機関等の定める技術的基準を踏まえて、各行政機関等において判断する必要があります。また、電子情報処理組織の具体的な定義については、デジタル手続法施行規則第 3 条とは別に、条例や地方公共団体の規則において定めることも可能です(デジタル手続法施行規則第 1 条)。

そのため、電子メールを用いた開示請求や開示の実施については、一概に否定されるものではありませんが、その場合であっても保有個人情報の取扱いに留意する必要があります。

オンライン申請による開示請求における本人確認の方法について、行政機関等の指定する方法により当該申請を行った者を確認するための措置を講ずる場合には、電子証明書を利用しない方法でも可能とされているため(デジタル手続法施行規則第 4 条第 2 項ただし書)、オンラインによる開示請求の場合に、本人確認書類を提示又は郵送で別途提出する方法も考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-2-5

開示請求をしようとする者が自ら開示請求書を記入することが困難である場合は、窓口等の担当者が代筆をすることは可能か。

A5-2-5

開示請求者が自ら開示請求書を記入することが困難な場合等には、窓口等の担当者が当該開示請求者に代わって記載することも考えられます。ただし、窓口等の担当者による当該記載は、開示請求者の了解を得た上で行う必要があります。この場合、請求を受ける前に、記載した内容について開示請求者の確認を再度求めるなど事後のトラブルが生じないように十分配慮する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-2-6

法定代理人の資格の有無の確認について、政令第 22 条第 3 項に規定する書類の提示又は提出に代えて、同一の地方公共団体の機関内で管理する戸籍簿の確認により行うことは許容されるか。

A5-2-6

政令第 22 条第 3 項において、法定代理人は同項に規定する書類を行政機関の長等に提示し、又は提出しなければならないと定められているところ、同一の地方公共団体の機関内で管理する戸籍簿の情報を参照することで、当該書類の提示又は提出を不要とすることはできません。

他方、なりすましや利益相反防止といった観点からは、法定代理人からの申請があった場合において、本人の権利利益を損なうことのないように対応することが必要です。そのため、同項に規定する書類の提示又は提出を前提として、必要に応じ、当該地方公共団体の機関において管理する戸籍簿を確認することで、代理権の確認をさらに補完することは考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-2-7

生活保護受給者証は、開示請求における本人確認書類に該当するか。

A5-2-7

生活保護受給者証は、政令第 22 条第 1 項第 1 号に掲げる書類をやむを得ない理由により提示し、又は提出できない場合には、同号に掲げる本人確認書類に該当し得ると考えられます。

なお、全世代対応型の社会保障制度を構築するための健康保険法等の一部を改正する法律(令和3年法律第 66 号)により、生活保護法(昭和 25 年法律第 144 号)第 80 条の 2に規定する公費負担者番号及び受給者番号について、「告知要求制限」の規定が設けられていることから、告知要求制限に抵触することのないよう、生活保護受給者証の取扱いには十分注意する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-2-8

政令第 22 条第 2 項第 2 号に定める「その他その者が前号に掲げる書類に記載された本人であることを示すものとして行政機関の長等が適当と認める書類であって、開示請求をする日前 30 日以内に作成されたもの」について、30 日以内の起算日はいつか。

A5-2-8

政令第 22 条第 2 項第 2 号の規定する「開示請求をする日前 30 日以内に作成されたもの」については、開示請求者が開示請求を行った日(一般的には開示請求書に請求日として記載された日付がこれに該当すると考えられます。)を起算点として、同日前 30 日以内に作成されたものをいいます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-2-9

開示請求書を送付して開示請求を行う場合、本人確認書類として提出のあった住民票の写し等の書類を返却することは可能か。

A5-2-9

開示請求者から提出された本人確認書類については、行政機関等において適切に本人確認を行ったことを記録として残すなどの目的で、その原本若しくは複写物を保管し、又は個人番号以外の番号等の記録を保存する場合は、これを保有個人情報として適切な管理を行う必要があります。

もっとも、本人確認書類の原本若しくは複写物を保管し、又は個人番号以外の番号等の記録を保存することは法及び政令を遵守する上での必須事項ではなく、本人確認書類の保管やその具体的方法について、法及び政令において特段の定めがあるものではありません。そのため、本人確認書類として提出された住民票の写し等の書類を返却することも妨げられません。
(令和 6 年 3 月追加)

5-3 開示請求権等
Q5-3-1

本人に保有個人情報の提供をする場合において、法第 69 条第 2 項第 1 号の規定により提供する場合と、開示請求に基づき開示を行う場合の関係について、どのように考えたらよいか。

A5-3-1

何人も、行政機関の長等に対し、当該行政機関の長等の属する行政機関等の保有する自己を本人とする保有個人情報の開示を請求することができ(法第 76 条第 1 項)、その手続については法第 5 章第 4 節に定められています。

一方、法第 69 条第 2 項は、利用目的以外の目的のために、行政機関の長等が保有個人情報を利用・提供する場合について規定していますが、その具体的な手続等は法において定められていないことから、各行政機関等において定めることも考えられます。

同項第 1 号の「本人に提供するとき」については、例えば、本人からの口頭による申出に応じて保有個人情報の提供を行う場合が考えられますが、同号の要件を満たす場合においては、法第 78 条第 1 項の趣旨等も踏まえて、行政機関の長等の適切な判断の下での提供が求められます。

なお、法第 69 条各項の規定により提供できる保有個人情報であっても、これについて法第 76 条に基づく開示請求があったときは、法第 5 章第 4 節の手続に従って対応をする必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-3-2

未成年者とその法定代理人との利益相反が生じるような場合があり得るところ、未成年者の法定代理人による開示請求について、本人の意思を確認することはできるか。また、一律に本人の同意を証する書類の提出を義務付ける法施行条例の規定を設けることはできるか。

A5-3-2

法定代理人は、任意代理人とは異なり、本人のために代理行為を行う義務はあっても、代理行為に本人の同意は要しないため、本人の意思と独立して開示請求を行うことができます。

法第 108 条は、開示の手続に関する事項について、法第 5 章第 4 節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができることとしていますが、未成年者の法定代理人による開示請求について、一律に本人の同意を証する書類の提出を義務付けることは、実質的に任意代理のみを認めて法定代理を認めないこととなり、開示請求権について法に定めの無い制限を課すものであって開示の手続に関する事項であるとはいえず、そのような規定を法施行条例で定めることは認められません。

もっとも、開示請求に係る保有個人情報について、当該保有個人情報を法定代理人に開示することにより本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報(法第 78 条第 1 項第 1 号に規定する不開示情報)に該当する場合もあるところ、同号該当性の判断に当たって、必要に応じて本人の意思を確認することは妨げられません。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-3-3

本人が意思表示を行うことが困難な場合について、親族等の一定の者による開示請求を認めることはできるか。また、これを認める法施行条例の規定を設けることはできるか。

A5-3-3

法第 76 条は本人又は法定代理人若しくは任意代理人にのみ開示請求を行うことを認めており、これら以外の者による開示請求は認められず、これを認める法施行条例の規定を設けることはできません。

なお、本人が意思表示を行うことが困難な場合に、法令に基づくことなく利用目的以外の目的のために親族等に本人の保有個人情報を提供することについては、本人の生命、身体又は財産を保護するために必要がある場合であれば、法第 69 条第 2 項第 4 号の「本人以外の者に保有個人情報を提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当し、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められない限り、利用目的以外の目的のために保有個人情報を親族等に提供することができます。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-3-4

任意代理人からの開示請求について、本人の意思を特に確認する必要があるときに、本人に対して確認書を送付し、返信をもって本人の意思を確認する手続をとることはできるか。また、これを認める法施行条例の規定を設けることはできるか。

A5-3-4

任意代理人による請求の場合は、法定代理人による請求の場合と異なり本人から委任を受けていることが要件となります。そのため、なりすまし等による開示等請求制度の悪用を防止する観点から、任意代理人の資格を確認することは重要であり、必要に応じて本人に対して確認書を送付し、その返信をもって本人の意思を確認することは妨げられません。また、法第 108 条に規定する開示の手続に関する事項としてこれを認める法施行条例の規定を設けることも妨げられません。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-3-5

未成年者の法定代理人からの開示請求について、法定代理人である親権者が婚姻中の父母の場合、連名での開示請求を求めることはできるか。

A5-3-5

法第 76 条第 2 項に基づく未成年者の法定代理人による開示請求において、一律に婚姻中の父母の連名での請求を求めることは、当該未成年者や父母の置かれた状況によっては、開示請求権について法に定めの無い制限を課すものであり、許容されません。その上で、個別の事情に照らして、例えば、当該未成年者とその法定代理人として開示請求を行った親権者との間において利益相反が疑われる場合、その利益相反防止の観点から、法第 78 条第 1 項第 1 号の該当性の判断に当たり当該親権者以外の者に対する照会等を行うことは許容されます。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-3-6
  • ①本人が被保佐人又は被補助人である場合で、かつ、特定の事項について当該本人の保佐人又は補助人に代理権が付与されている場合、当該本人の保佐人又は補助人は、代理権が付与されている事務を遂行するにあたって必要と認められる範囲であれば、法定代理人として、当該本人に代わって開示請求を行うことができるか。
  • ②本人が任意後見人との間で任意後見契約を締結している場合、当該任意後見人は、代理権が付与されている事務を遂行するにあたって必要と認められる範囲であれば、法定代理人として、当該本人に代わって開示請求を行うことができるか。
A5-3-6

未成年者又は成年被後見人の法定代理人は、本人に代わって開示請求を行うことができる旨が規定されているところ(法第 76 条第 2 項)、①及び②は、未成年者又は成年被後見人の法定代理人に該当しないため、同項の法定代理人として開示請求を行うことはできません。

他方で、①又は②の場合に、同項の「本人の委任による代理人」として開示請求を行うことができることがあります。この場合、保佐人、補助人又は任意後見人の権限の範囲内かどうかにつき、登記事項証明書の代理権目録等に基づいて個別に確認することが必要です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-3-7

法人を任意代理人とする開示請求は可能か。また、可能な場合は、添付書類等はどのように考えればよいか。

A5-3-7

法においては、法人を任意代理人とする開示請求を制限する規定はありません。よって、法人が任意代理人として法に基づく開示請求を行うことは可能です。 ただし、業として代理行為が行われる場合については、関係法令に違反するものでないか確認が必要です。

法人が任意代理人として開示請求を行う場合については、任意代理人の資格を証明する委任状(政令第 22 条第 3 項)が必要となるほか、本人確認書類を提示又は提出する必要があります。

法人が任意代理人として開示請求を行う場合の本人確認書類については、事務対応ガイド 6-1-2-2【表 1】の(3)任意代理人による開示請求の場合の例や、法人が法定代理人として開示請求を行う場合の例を記載している同表注 12 も踏まえて判断することが必要です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-3-8

開示請求書に形式上の不備があり、相当の期間を定めて補正を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補正されない場合は、どのように対応すべきか。

A5-3-8

開示請求書に形式上の不備があり、相当の期間を定めて補正を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補正されない場合は、不開示決定を行うこととなります(法第 82 条第 2 項)。

なお、保有個人情報の特定が不十分である開示請求がなされた場合には、法第 77 条第 3 項の趣旨を踏まえ、開示請求者に対して、保有個人情報の特定に資する情報の提供を積極的に行わなければなりません。特定不十分として不開示決定を行うということは、開示請求者に対して十分な情報提供を行ったにもかかわらず、開示

請求者が補正の求めに応じなかった場合など開示請求者側に特別の事情がなければ生じないものであるということに留意する必要があります。

Q5-3-9

代理人による開示請求において、本人からの委任の事実を確認する必要があって補正を求めたが、なお当該委任の事実が疑わしい場合、適切に補正に応じないことをもって不開示決定をすることになるのか。それとも法第 78 条第 1 項第 1 号に該当するとして不開示決定をすることになるか。

A5-3-9

本人確認書類や代理人の資格を証明する書類が提示又は提出されない場合には、法第 77 条第 3 項の「形式上の不備」があるものとして、同項の規定に基づき、適切な情報提供を行った上で、できる限り補正を求めることが望ましいと考えられます。それでもなお不備が解消されない場合には、法第 82 条第 2 項の不開示決定をすることとなります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-3-10

開示請求の取下げを行うことは可能か。

A5-3-10

開示請求者からの申出により、開示請求の取下げを行うことは可能です。なお、事後に疑義が生じることを避けるため、当該申出については書面により受けることが望ましいと考えられます。具体的な運用については、開示請求を受けた行政機関等において適切に対応する必要があります。

なお、開示決定は、適切に行われた開示請求の下、既に瑕疵なく成立した行政処分であり、当該行政処分の通知後にその元となった請求を取り下げることはできません。
(令和 6 年 3 月追加)

5-4 不開示情報
Q5-4-1

情報公開条例における不開示情報と、法における不開示情報の対象範囲が異なっているが、その解消方法を示されたい。

A5-4-1

情報公開条例では開示されることとされている情報が、法第 78 条第 1 項各号で不開示情報として規定されている場合、当該情報を条例で規定することにより、不開示情報から除くことが可能です。また、情報公開条例では開示しないこととされている情報が、法第 78 条第 1 項各号において不開示情報として規定されていない場合も、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成 11 年法律第 42 号。以下「情報公開法」という。)上の不開示情報に準ずる情報については、当該情報を条例で規定することにより、不開示情報に追加することが可能です(いずれも法第 78 条第 2 項)。

なお、情報公開条例における不開示情報が実質的に法第 78 条第 1 項各号の不開示情報に含まれている場合には、情報公開条例における不開示情報と同様の取扱いをするために条例で規定する必要はありません。また、開示等請求は、個人が自己に関する個人情報の正確性や取扱いの適正性などを確認する権利を保障する重要な制度であることから、情報公開条例と整合を図るために条例に規定を定める場合は、個人の権利利益が不当に侵害されることのないよう留意をする必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-4-2

法人等を代表する者が職務として行う行為に関する情報については、不開示情報である「開示請求者以外の個人に関する情報」(法第 78 条第 1 項第 2 号)には該当しないと考えてよいか。

A5-4-2

法人等を代表する者が職務として行う行為等の当該法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報については、法第 78 条第 1 項第 2 号の不開示情報には該当しないと考えられます。ここでいう「法人等を代表する者」とは、法人の代表取締役に限られるものではなく、当該行為を行う権限を委任されている者を指します。なお、当該情報について、同項第 3 号の不開示情報に該当する場合があることに留意する必要があります。
(令和 6 年 3 月更新)

Q5-4-3

他の法令の規定等により開示することができない情報は、法第 78 条第 1 項各号において明示的に不開示情報とはされていないが、このような情報を不開示情報として取り扱うことはできるか。

A5-4-3

法第 78 条第 1 項各号の不開示情報は、保護すべき権利利益に着目して分類したものであり、多様な情報に関し、可能な限り明確かつ実質的な判断により開示されるようにするため、不開示により保護しようとしている情報の類型ごとに定性的な支障の有無等を規律しているものです。そのため、他の法令の規定等により開示することができないとされている場合、通常これらの類型に該当するものと考えられますが、当該情報が法第 78 条第 1 項各号のいずれに該当するかを実質的に判断する必要があります。

Q5-4-4

不動産登記情報については法第 78 条第 1 項第 2 号イに該当するものとして開示可能か。

A5-4-4

前提として、不動産登記簿及びその附属書類等に記録されている保有個人情報については、不動産登記法(平成 16 年法律第 123 号)第 155 条又は同法附則第 4 条第 4 項において、個人情報保護法第 5 章第 4 節の規定は適用しないこととされています。上記以外の行政文書について、開示請求に係る保有個人情報として不動産登記情報が 含まれている場合、このうちの法第 78 条第 1 項第 2 号に該当する情報について、同号イからハまでの開示情報に該当するか否かは、当該情報の個別具体的な内容を踏まえて判断する必要があります。

一般的に不動産登記簿に記載されている不動産所有者等の情報については、「法令の規定により」開示請求者が知ることができる情報であると考えられます。また、同号イの「法令」には条例が含まれるところ(法第 61 条第 1 項括弧書き)、例えば、情報公開条例において、当該情報について何人に対しても等しく当該情報を開示すること又は公にすることを定めている場合には、法第 78 条第 1 項第 2 号イに該当するものとして不開示情報から除外されると考えられます。

その上で、法第 78 条第 1 項第 2 号イからハまでの開示情報に該当する場合であっても、同項各号(第 2 号を除く。)の不開示情報に該当する場合や、同条第 2 項の規定により法施行条例で定めた不開示情報に該当する場合は、不開示とすることが考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-4-5

本人同席の下での第三者の発言は、法第 78 条第 1 項第 2 号イの「法令の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ」る情報に該当するか。

A5-4-5

開示請求に係る保有個人情報の中に、開示請求者(代理人が本人に代わって開示請求をする場合にあっては当該本人。以下同じ。)以外の個人(第三者)に関する情報が含まれている場合は、法第 78 条第 1 項第 2 号該当性について判断する必要があります。

同号イの「法令の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」のうち「慣行として開示請求者が知ることができ」るとは、慣習法としての法規範的な根拠を要するものではなく、事実上の慣習として知ることができ、又は知ることが予定されていることで足りるとされています。他方、開示請求のあった保有個人情報と同種の情報について、本人が知ることができた事例があったとしても、それが個別的な事例にとどまる限り「慣行として」には該当しません(事務対応ガイド 6 - 1-3-1-1(3)参照)。

この点、「本人同席の下での第三者(開示請求者以外の者)の発言」の内容は、一般的に、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報」に該当し、不開示情報から除かれると考えられますが、個別の事案ごとに適切に判断することが必要です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-4-6

法第 78 条第 1 項第 2 号ハは、公務員等の職務の遂行に係る情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分は非開示情報に該当しない旨を規定しているが、当該公務員等の氏名は規定されていないため、当該氏名は不開示情報に該当し、開示することができないのか。

A5-4-6

法第 78 条第 1 項第 2 号ハは、公務員等の職務の遂行に係る情報のうち当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分を同号柱書の不開示情報から除外しています。他方、公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、開示した場合、当該公務員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付けられており、同号柱書の不開示情報から除外されていません。

もっとも、他の法令の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報については、同号イに該当し、例外的に開示することとなります。

行政機関においては、情報公開法において、①氏名を公にすることにより、同法第 5 条第 2 号から第 6 号までに掲げる不開示情報を公にすることとなるような場合、②氏名を公にすることにより、個人の権利利益を害することとなるような場合を除き、行政機関に所属する職員(補助的業務に従事する非常勤職員を除く。)の職務遂行に係る情報に含まれる当該職員の氏名は公にするものとされていることから(「平成 17 年 8 月 3 日情報公開に関する連絡会議申合せ」参照。)、当該職員の氏名について、①及び②に当たらない場合には、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている」場合に該当すると考えられます。

また、独立行政法人等、地方公共団体の機関及び地方独立行政法人において職員の人事異動をホームページ等で公表するなど「平成 17 年 8 月 3 日情報公開に関する連絡会議申合せ」によることなく氏名を公表する慣行がある場合や、行政機関等により作成され、又は行政機関等が公にする意思をもって(あるいは公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名が掲載されている場合には、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている」場合に該当します。
(令和 4 年 4 月更新)

5-5  開示決定
Q5-5-1

行政機関等が個人情報取扱事業者へ業務を委託する場合において、当該委託に係る保有個人情報の開示請求等についてどのように対応すべきか。

A5-5-1

情委託を受けた者(以下「委託先」という。)が当該委託業務に伴って取り扱う個人情報については、①当該個人情報が委託先にとっての保有個人データ(法第 16 条第 4 項)に該当する場合には、法第 33 条の規定に基づき個人情報取扱事業者としての開示に係る規律の適用があると同時に、②当該個人情報が委託元である行政機関等にとっての保有個人情報に該当する場合には、法第 76 条その他の規定に基づく開示請求の対象となります。委託先にとって、取扱いの委託を受けた当該個人情報が保有個人データに該当するかについては、委託元である行政機関等から委託先に対して、当該個人情報の開示等を行う権限を付与したか等、個別の事例ごとに判断する必要があります。

なお、①には該当しないが②には該当する個人情報に係る開示請求(法第 33 条)に関する問合せが委託先にあった場合、法第 37 条第 2 項や第 127 条の趣旨を踏まえ、当該委託先において開示請求者にその旨を教示し、②の行政機関等への開示請求を案内するなどの対応を行うことが適切と考えられます。その上で、なお当該委託先への開示請求(法第 33 条)が行われる場合は、「当該保有個人データが存在しないとき」に該当するものとして、遅滞なく、その旨を本人に通知することとなります(法第 33 条第 3 項)。
(令和 6 年 3 月追加)

5-6  開示の方法
Q5-6-1

開示請求の対象は「保有個人情報」とされているが、1 つにまとめられた行政文書等の一部分に開示請求者に係る保有個人情報が記載されているような場合に、開示すべき範囲をどのように考えればよいか。

A5-6-1

開示請求の対象は、行政文書等に記録されている「保有個人情報」です。そのため、開示請求の対象の特定は、行政文書等に記録されている「保有個人情報」単位で行うものであり、必ずしも「行政文書等」単位とはなりません。「保有個人情報」に該当する範囲については、行政文書等の性質や記録されている情報の内容等に応じて個別具体的に判断する必要があります。

なお、開示請求者に係る保有個人情報に該当しない部分については開示する必要はありませんが、当該保有個人情報に該当しない部分を含めて開示する場合には、当該保有個人情報に該当する部分を明確にする必要があります。また、当該保有個人情報に該当しない部分についても、不開示情報を開示することがないよう留意する必要があります。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-6-2

法第 79 条第 1 項は、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合において、不開示情報に該当する部分を容易に区分して除くことができるときは、開示請求者に対し、当該部分を除いた部分につき開示しなければならないと規定している。A市の情報公開条例では、開示請求に係る保有個人情報に不開示情報が含まれている場合であっても、不開示情報に該当する部分を除いた部分につき開示しなければならない旨を規定し、当該不開示情報に該当する部分を区分して除くことが困難であるときに限って例外を認めている。保有個人情報の開示請求についても、法施行条例で規定することにより、情報公開条例と同様の取扱いとすることができるか。

A5-6-2

法第 79 条第 1 項の「容易に区分して除くことができるとき」とは、当該保有個人情報のどの部分が不開示情報に該当するかという区分けが困難な場合及び区分けは容易であるがその部分の分離が技術的に困難な場合について、部分開示の義務がないことを明らかにしたものです。

そのため、同項の規定においても、不開示情報に該当する部分を区分して除くことが困難であると認められない場合には、当該部分を除いた部分につき開示しなければならないものであり、改めて法施行条例に規定する必要はありません。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-6-3

開示の実施の方法等の申出について、口頭で調整することは可能か。

A5-6-3

開示請求における開示の実施の方法等の申出については、書面により行わなければならないとされているところ(法第 87 条第 3 項及び政令第 26 条第 1 項)、申出にあたっては、原則として開示の実施の方法等の申出書を提出する必要があります。

ただし、開示請求書に記載された開示の実施の方法等により開示を実施することができる場合において、当該開示の実施の方法等を変更しないときは、申出は不要です(法第 87 条第 3 項及び政令第 26 条第 2 項)。

開示請求書に希望日の記入がない等の場合には、原則として開示の実施の方法等の申出書の提出が必要となりますが、開示請求書における開示の実施の方法等の内容について、客観的な証拠(通話メモ、録音等)により訂正又は追完されたことが証明できる場合 には、開示請求者の了解を得た上で、本人に代わって口頭等で調整した内容に記載を修正する等の方法により法第 77 条第 3 項に基づく補正を行うことで、政令第 26 条第 2 項の規定により開示の実施の方法等の申出書の提出を不要とすることは差し支えありません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-4

開示の実施の方法等の申出は、書面により行う必要があるが(政令第 26 条第 1 項)、ファクシミリや電子メールによって行うことは可能か。

A5-6-4

開示を受ける者は、開示決定通知があった日から原則として 30 日以内に開示の実施の方法等を書面により行政機関の長等に申し出る必要があるところ(法第 87 条第 3 項及び政令第 26 条第 1 項)、当該申出をファクシミリにより行うことも可能です。

また、当該申出は、デジタル手続法第 6 条第 1 項において、主務省令で定める電子情報処理組織を使用する方法により行うことができるとされているため、「電子メール」を使用する方法が当該方法に該当するかを検討する必要があります。

電子情報処理組織の具体的な定義については、Q5-2-4をご参照ください。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-5

送付による開示の実施を行う場合において、本人限定受取郵便による送付のみとする運用は許容されるか。

A5-6-5

送付による開示の実施を行う場合に、本人(開示請求者)限定受取郵便により送付する運用を行うことは妨げられません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-6

閲覧による開示の実施を行う場合において、開示請求者からその保有個人情報について、開示請求者が持参したカメラにより撮影したいとの求めがあった場合、カメラによる撮影を認めることは許容されるか。

A5-6-6

文書又は図画の閲覧又は写しの交付の具体的な方法については、法令等において特段の定めはないため、行政機関の長等において、保有個人情報が記録されている文書又は図画の種類等に応じてその方法を定めた上で適切な方法により実施することとなります。

なお、閲覧による開示の実施に際して、開示の実施を受けようとする者が持参したカメラでの撮影等を行うことについては、法上可能であると考えられるところ、開示の実施を受けようとする者から申出があった場合には、行政機関の長等において、庁舎管理上の問題や他の窓口利用者への支障等を考慮し、適切に対応することが望ましいと考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-7

開示の実施における媒体を指定した開示請求があった場合であって、保有個人情報は存在するが、当該指定と異なる媒体でしか開示ができない場合について、当該開示請求について開示しない旨の決定をすることは可能か。

A5-6-7

法第 78 条第 1 項において、「行政機関の長等は、開示請求があったときは、開示請求に係る保有個人情報に次の各号に掲げる情報(略)のいずれかが含まれている場合を除き、開示請求者に対し、当該保有個人情報を開示しなければならない」とされているところ、保有個人情報の開示・不開示の決定は、開示請求を受けた行政機関の長等が同項各号の不開示情報が記録されているかどうかを判断することによって行うものです。

したがって、不開示情報に該当しないにもかかわらず、保有個人情報の保有の形式が開示請求者の求める形式ではないことをもって不開示決定を行うことは不適切であると考えられます。

なお、開示を受ける者は、開示決定通知があった日から原則として 30 日以内に開示の実施の方法等を書面により行政機関の長等に申し出なければならない(法第 87 条第 3 項及び同条第 4 項並びに政令第 26 条第 1 項)とされており、これは開示請求者が開示の実施の方法等を自らの意思で選択するための規定です。開示の実施の方法等の申出については、開示決定通知書で提示した方法のうちから選択するものですが、開示決定通知書で提示した方法以外の方法等の申出があった場合には、申出人に連絡を取り、開示の実施の方法等を確定することとなり、必ずしも申出のあった方法等で開示することを義務付けるものではありません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-8

開示決定から 30 日以内に、複数回の閲覧の申出や、閲覧後に改めて交付の実施の申出があった場合、当該申出に対応することは許容されるか。

A5-6-8

一の開示決定に対し複数回の開示の実施の申出があった場合の対応について、法に明確な制限規定はありません。法の趣旨を踏まえ行政機関等において適切に判断することが必要です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-9

法第 82 条第 1 項の規定により、開示決定に当たり請求者に対して「事務所における開示を実施することができる日、時間及び場所」(政令第 24 条第 1 項第 2 号)を書面で通知することとされているが、この「開示を実施することができる日」について、開示を受けることができる期間を設定することは可能か。

A5-6-9

政令第 24 条第 1 項第 2 号において定める「開示を実施することができる日」について、開示を受けることができる期間を設定することは妨げられません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-10

代理人による開示請求があった場合において、本人が死亡した場合であっても開示の実施を行うことは可能か。

A5-6-10

法第 76 条第 2 項の規定により、代理人による開示請求が認められているところ、当該代理人は、当該開示請求に係る保有個人情報の開示を受ける前にその資格を喪失したときは、直ちに、書面でその旨を当該開示請求をした行政機関の長等へ届け出なければならず(政令第 22 条第 4 項)、この届出があったときは、当該開示請求は、取り下げられたものとみなされます(政令第 22 条第 5 項)。これは、代理人による請求を前提として行われている開示請求手続を終了させるものであり、また、代理権を有しない者に開示することにより、本人の権利利益を害する事態が発生しないように、開示請求が取り下げられることとされているものです。

法に基づく開示請求における代理権は、本人が死亡した場合には消滅すると考えられるため、当該場合において、代理人に対し開示の実施を行うことは適切ではありません。この場合、当該代理人へ政令第 22 条第 4 項による届出を促す等の対応が考えられます。

なお、当該開示請求に係る審査手続等を考慮し、提出された書類等から、開示の実施が想定される日に任意代理人がその資格を喪失しているおそれが懸念される場合には、その資格の有無を確認する必要もあります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-11

任意代理人が行った開示請求について、開示の実施を任意代理人ではなく本人に対して行うことは可能か。

A5-6-11

本人の意思を確認した上で、開示の実施を任意代理人ではなく本人に対して行うことは妨げられません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-12

開示請求者が保有個人情報の開示の実施の日時に連絡なしに来庁しない等、開示請求者の都合により開示の実施を行うことができなかった場合、当該開示請求について、どのように取り扱うべきか。

A5-6-12

開示決定を受けた者は、その求める開示の実施の方法等を申し出なければならず、当該申出は原則として開示決定の通知があった日から 30 日以内にすることとされています(法第 87 条第 3 項及び第 4 項)。

そして、当該期間中に開示の実施の方法等の申出がない場合には、正当な理由がない限り開示の実施を受けることはできず、開示の実施を受けるためには改めて開示請求を行う必要があります。

なお、開示決定は、適切に行われた開示請求の下、既に瑕疵なく成立した行政処分であ り、当該行政処分の通知後にその元となった請求を取り下げることはできません。よって、このような場合に、開示請求について取下げがあったものとみなす、あるいは職権で開示請求を取り消して手続を打ち切ることは許容されません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-6-13

大量の開示請求を行う場合等、濫用的な開示請求について、拒否することは可能か。また、権利濫用に当たる場合を法施行条例で規定することはできるか。

A5-6-13

権利濫用が許されないことは「法の一般原則」であり、行政機関等の事務事業を停滞させることを目的とするような開示請求の場合には、明文の規定がなくても、権利濫用を理由とする拒否処分を行うことは可能です。

ただし、法が個人の権利として開示請求権を認めている趣旨に鑑み、権利濫用の該当性の判断は個別具体的な事情に応じて慎重に行う必要があるところ、法施行条例において形式的な要件を規定し、これに該当することのみを理由として拒否処分を行うことはできません。

一般的に、開示請求対象の保有個人情報が大量であるということのみでは権利濫用とはいえず、請求者が行政機関等に支障を与えることを目的として開示請求を行うような場合でなければ、権利濫用とは認められません。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-6-14

他の法令に基づき紙で写しを交付している情報について、電磁的記録を保有している場合に、電磁的記録の開示請求を受けたときは、法第 88 条第 1 項の「同一の方法で開示することとされている場合」には該当せず、電磁的記録の開示を実施する必要があるか。

A5-6-14

法は、他の法令(条例を含む。)の規定による開示の方法が法第 87 条第 1 項本文の開示の方法と同一である場合に限って、法に基づく開示として当該同一の方法による開示をしないこととしています(法第 88 条第 1 項)。そのため、他の法令に基づき紙で写しを交付している場合であっても、電磁的記録の開示について行政機関等が定める方法(法第 87 条第 1 項)による開示を求められたときは、「同一の方法で開示することとされている場合」には当たらないことから、不開示情報に該当するなどの別の理由がない限り、法に基づき電磁的記録について行政機関等が定める方法による開示を実施する必要があります。

Q5-6-15

住民基本台帳法に基づく住民票の写しの交付は、法第 88 条の「他の法令による開示の実施」に該当するか。また、住民票の写しの交付を受けた場合は、法第 90 条の訂正請求の対象となるか。

A5-6-15

住民票の写しの交付は、法第 88 条の「他の法令による開示の実施」に該当するものと考えられます。

また、法において、訂正請求又は利用停止請求の対象は、開示決定に基づき開示を受けた保有個人情報(法第 90 条第 1 項第 1 号)又は開示決定に係る保有個人情報であって、法第 88 条第 1 項の他の法令の規定により開示を受けたもの(法第 90 条第 1 項第 2 号)に限られています(同項柱書及び第 98 条第 1 項)。そのため、他の法令により開示の実施を受けているものであっても、法第 76 条第 1 項に基づく開示請求が行われている必要があり、その上で法第 82 条に基づく開示決定を経ていない保有個人情報については、訂正請求又は利用停止請求の対象となるものではありません。
(令和 6 年 3 月追加)

5-7  処理期間
Q5-7-1

法は、開示決定等の期限について、①原則として開示請求があった日から 30日以内とした上で(法第 83 条第 1 項)、②事務処理上の困難その他正当な理由があるときは 30 日以内に限り延長することができることとしている(同条第 2 項)。これらの期間について、法施行条例で規定することにより、より短い期間とすることができるか。また、①の期間を 15 日以内とした場合、②の期間を 45 日以内とすることはできるか。

A5-7-1

法第 108 条は、開示の手続に関する事項について、法第 5 章第 4 節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができることとしているところ、開示決定等の期限については開示の手続に関する事項に含まれるため、法施行条例で 30 日以内の任意の期間とすることは認められます。また、法第 83 条第 2 項の延長可能な期間についても、30 日以内の任意の期間とすることは認められます。

もっとも、法第 83 条第 1 項の期間を短縮した場合であっても、同条第 2 項の期間について法が定める 30 日を超える期間とすることはできません。

なお、法第 84 条で「60 日以内」とされている期間は法第 83 条第 1 項及び第 2 項の期間の合計であることから、例えば、法施行条例で同条第 1 項の期間を「15 日以内」とし、同条第 2 項の期間を「20 日以内」とした場合には、法施行条例で第 84 条の期間を「35 日以内」として、整合を図る必要があります。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-7-2

開示決定等の期限に係る初日の算入又は不算入といった期間計算の方法について、法とは異なる内容を法施行条例で規定することはできるか。

A5-7-2

期間計算の方法については、民法(明治 29 年法律第 89 号)第 140 条の規定に基づき、「開示請求があった日」の翌日から起算し、同法第 142 条の規定により、その期間の末日が行政機関等の休日に当たる場合は、その翌日をもって期間が満了することになるところ、これと異なる方法を法施行条例で規定することはできません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-7-3

オンラインによる開示請求において、開示請求の申請が年末の最終開庁日に行われ、ファイルの到達を受付職員が確認した日が年始の開庁日になるなど、長期閉庁日の直前に行われた開示請求について、数日間開示請求に係る一連の処理が行えない期間が発生することが考えられるが、このような場合に、法第 83 条第 1 項に規定する「請求があった日」についてどのように考えればいいか。

A5-7-3

情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律(平成 14 年法律第 151号)第 6 条第 3 項において、オンラインによる申請等は、当該申請等を受ける行政機関等の使用に係る電子計算機に備えられたファイルへの記録がされた時に当該行政機関等に到達したものとみなすとされています。年末年始等の長期閉庁日の直前に開示請求がなされた場合であっても、オンラインで申請がなされた場合における「請求があった日」は、行政機関等の汎用受付等システムに備えられたファイルへの記録が完了した日となり、当該長期閉庁日期間も含めて開示決定までの期限は計算されます。その上で、開示期限までの開庁日において、事務処理上の困難その他正当な理由がある場合には、開示期限の延長を行うことも考えられます。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-7-4

オンラインによる開示請求における「開示請求があった日」の考え方について、開示請求申請に係る行政機関等の汎用受付等システムに備えられたファイルへの記録が完了した日が閉庁日である場合は、「開示請求があった日」はいつになるのか。

A5-7-4

閉庁日にオンライン申請等がなされた場合であっても、開庁日同様、オンラインで申請がなされた場合における「開示請求があった日」は、行政機関等の汎用受付等システムに備えられたファイルへの記録が完了した日となります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-7-5

法第 83 条第 2 項の規定により開示決定等の期限を延長する場合において、その期間の末日が行政機関等の休日にあたるときは、当該期間計算の方法について、どのように考えればよいか。

A5-7-5

期間計算の方法については、民法第 140 条の規定に基づき、開示請求があった日の翌日から起算し、同法第 142 条の規定により、その期間の末日が行政機関等の休日に当たる場合は、その翌開庁日をもって期間が満了することになります。これは、法第 83条第 2 項の規定により開示決定等の期限を延長する場合においても同様です。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-7-6

開示請求者への補正を求めるかどうかの判断にあたり関係機関等へ照会をする場合があるが、当該照会をした後、関係機関等から返答があるまでの期間を「補正に要した日数」と考えてよいか。

A5-7-6

法第 77 条第 3 項の規定により補正を求めた場合にあっては、当該補正に要した日数は、当該期間に算入しない旨が規定されているところ、この「補正に要した日数」とは、補正を求めた日の翌日から当該補正が完了した日までの日数をいい、「補正を求めた日」とは、行政機関等において補正書の発送等を行った日をいいます。

よって、開示請求者に補正を求める前の経過日数や、補正完了後の経過日数については「補正に要した日数」には含まれないものと考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-7-7

1 通の開示請求書で、複数の行政文書について開示請求が行われた場合において、そのうちの一部の行政文書の特定が不十分なため、形式上の不備があるものとして法第 77 条第 3 項の規定による補正を求めた場合はどのように対応すべきか。

A5-7-7

行政機関の長等に対して、1 通の開示請求書により 1 件とみなされる複数の行政文書等(一の行政文書ファイルにまとめられた複数の行政文書等もしくは相互に密接な関連を有する複数の行政文書等)に記録された保有個人情報について開示請求が行われ、当該複数の保有個人情報について開示決定等を行った場合は、基本的には、当該複数の開示決定等は 1 通の通知書により行います(開示決定と不開示決定とがある場合はそれぞれ 1 通の通知書により行います。)(事務対応ガイド 6-1-4-3 参照)。

ただし、各保有個人情報について、その量や開示・不開示の審査の難易度が異なるとの事情により、開示決定等の期限が異なるような場合には、審査が終了し開示決定等をしたものから順次通知することも可能です。

1 通の開示請求書により、複数の行政文書について開示請求がなされており、請求内容の判読が困難な項目等が混在している場合であっても、請求に係る保有個人情報が特定されたものについては、開示決定等を行う必要があります。他方、特定されないものについては、相当の期間を定めて補正を求めた上で、当該期間内に補正がなされない場合には、形式上の不備として不開示決定を行うことが考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

5-8 手数料
Q5-8-1

開示請求の手数料は、国と異なる手数料を定めることは可能か。

A5-8-1

地方公共団体における開示請求に係る手数料は、「実費の範囲内において条例で定める額」とされており(法第 89 条第 2 項)、その額を定めるに当たっては、できる限り利用しやすい額とするよう配慮しなければならないとされています(法第 89 条第 3項)。

「実費」には、開示決定を受け付け、保有個人情報を検索し、開示の是非を精査し、開示決定等の通知書を発するまでの申請事務処理の費用と、請求対象の保有個人情報が記載された行政文書の写しの作成経費などの実施に必要な経費が含まれます。

国と異なる手数料とすることも可能ですが、各地方公共団体において、法の趣旨を踏まえ、条例で適切に定める必要があります。

なお、実費の範囲内であれば、従量制の開示手数料を定めることが可能であり、また、手数料を無料とすることも妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-8-2

開示請求の手数料とは別に、開示文書の写しの交付に要する費用を実費として徴収することはできるか。

A5-8-2

コピー代や記録媒体の費用等の実費について、開示請求の手数料とは別に徴収することは可能です。なお、法第 89 条第 2 項の規定により、地方公共団体の機関における開示請求の手数料は実費の範囲内において条例で定める額とされているところ、実費相当額を重複して徴収することがないよう留意する必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-8-3

開示請求に係る手数料について、条例で減免について規定することはできるか。

A5-8-3

地方公共団体の判断により、条例で手数料の減免について規定することは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-8-4

開示請求について、事案の移送が行われた場合、手数料の取扱いはどうなるのか。

A5-8-4

開示請求者は移送元に対して開示請求をしているところ、事案の移送の実施については義務ではなく、移送を行うか否かは、移送元が、移送先等の関係行政機関の長等と協議をした上で、開示請求者の意向によらず決定されます。

この点、開示請求者は開示請求の手続実施時に確認した内容に基づき手数料を支払うことを想定していると考えられることから、移送元の手数料規定に従うべきであると考えられます。

なお、当該手数料を移送元と移送先のいずれが収納するかについては、個々の事案によるものと考えられますので、移送元と移送先において適切に協議する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

5-9 訂正及び利用停止
Q5-9-1

訂正請求を行う者に対して、当該請求の内容が事実に合致することを証明する資料の提出又は提示を求めることはできるか。また、これを認める法施行条例の規定を設けることはできるか。

A5-9-1

法第 90 条第 1 項は、何人も、自己を本人とする保有個人情報の内容が事実でないと思料するときは、当該保有個人情報の訂正を請求することができることとしているところ、請求者が訂正請求に係る保有個人情報の内容を事実でないと考える根拠を示すことを超えて、当該請求の内容が事実に合致することを証明する資料を提出又は提示しなければならないこととすることは、当該請求者に対して一方的に当該請求の内容が事実に合致することの立証責任を課すこととなり、例えば、当該資料を行政機関等のみが保有している場合などにおいて、訂正請求ができる場合を実質的に制限するものであると考えられます。そのため、訂正請求を行う者に対して、当該資料の提出又は提示を求めることはできません。また、法第 108 条は、訂正の手続に関する事項について、法第 5 章第 4 節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができることとしていますが、訂正請求を行う者に対して、当該請求の内容が事実に合致することを証明する資料の提出又は提示を求めることは、訂正請求ができる場合を実質的に制限するものであるため、訂正の手続に関する事項であるとはいえず、これを認める法施行条例の規定を設けることはできません。

なお、一般に、訂正請求を行う者は、開示を受けた保有個人情報のうち、①どの部分の表記について、②どのような根拠に基づき当該部分の表記が事実でないと判断し、③その結果、どのような表記に訂正すべきと考えているのか等、請求を受けた行政機関の長等が当該保有個人情報の訂正を行うべきか否かを判断するに足る内容を、当該行政機関の長等に自ら根拠を示して明確かつ具体的に主張する必要があります。そして、訂正請求を行う者から明確かつ具体的な主張や根拠の提示がない場合や当該根拠をもってしても当該請求に係る保有個人情報の内容が「事実でない」とは認められない場合には、法第 92 条の「訂正請求に理由があると認めるとき」に該当しないと判断することとなります。
(令和 4 年 4 月更新)

Q5-9-2

法は、訂正請求や利用停止請求の対象となる保有個人情報について、本人が法の開示決定に基づき開示を受けたもの又は法第 88 条第 1 項の他の法令の規定により開示を受けたものに限っているところ(法第 90 条第 1 項及び第 98 条第 1 項)、法施行条例で規定することにより、本人が開示を受けていない保有個人情報についても訂正請求や利用停止請求の対象とすることはできるか。

A5-9-2

法は、対象となる保有個人情報の範囲を明確にし、訂正請求及び利用停止請求の制度の安定的運用を図るため、これらの制度について開示を受けた保有個人情報を対象としています。他方、法第 108 条は、訂正及び利用停止の手続に関する事項について、法第 5 章第 4 節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができることとしているところ、開示を受けていない保有個人情報について訂正請求及び利用停止請求の対象とすることは、これらの請求の前提となる手続に関するものであり、訂正及び利用停止の手続に関する事項に含まれるため、訂正請求や利用停止請求の制度の運用に支障が生じない限りにおいて、そのような法施行条例を規定することは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-9-3

法第 95 条は、訂正決定等に特に長期間を要すると認めるときは、相当の期間内に訂正決定等をすれば足りることとしているが、法施行条例で規定することにより、訂正決定等を行うべき期間に上限を設け、又は期間の延長に訂正請求者の同意を要することとすることはできるか。

A5-9-3

法第 108 条は、訂正の手続に関する事項について、法第 5 章第 4 節の規定に反しない限り、条例で必要な規定を定めることができることとしているところ、訂正決定等を行うべき期間に上限を設け、又は期間の延長に訂正請求者の同意を要することとすることは、訂正の手続に関する事項に含まれるため、そのような法施行条例を規定することは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-9-4

行政機関の長等は、訂正決定に基づく保有個人情報の訂正の実施をした場合において、必要があると認めるときは、当該保有個人情報の提供先に対し、遅滞なく、その旨を書面により通知するものとされている(法第 97 条)。この点について、行政機関の長等において、提供先に当該保有個人情報を訂正させる等必要な措置を講じることを求めることはできるか。また、提供先に対して当該個人情報を訂正させる等必要な措置を講じる義務を課す法施行条例の規定を設けることはできるか。

A5-9-4

行政機関の長等は、法第 70 条に規定する場合において必要があると認めるときは、保有個人情報の提供先に対して、個人情報の適切な管理のために必要な措置を講ずることを求めることができるところ、当該措置の一環として、提供先に対して訂正に応ずべき旨を求めることも考えられます。もっとも、地方公共団体の内部管理に関する事項として提供先に対して必要な措置を講じる旨を法施行条例で規定することは妨げられませんが、提供先に対して訂正義務を課すなど、当該団体の内部管理にとどまらない事項については、法施行条例で規定することはできません。
(令和 4 年 4 月更新)

5-10 審査請求
Q5-10-1

開示決定等に伴い、審査請求等ができる旨の教示を口頭で行うことは可能か。また、開示請求等に対し全部開示を行う場合であっても、審査請求等ができる旨の教示は必要か。

A5-10-1

開示決定等は、審査請求の対象となる「処分」に当たるため、処分の相手方に対し、当該処分につき不服申立てをすることができる旨並びに不服申立てをすべき行政庁及び不服申立てをすることができる期間を、当該処分を口頭でする場合を除き、書面で教示しなければなりません(行政不服審査法第 82 条第 1 項)。

なお、全部開示とする処分についても、開示の対象となる保有個人情報の特定に不服がある場合等、審査請求を行うことが可能と考えられますので、審査請求等ができる旨の教示を行う必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-10-2

財産区に対する開示請求に係る開示決定等について、審査請求先はどのように考えればよいか。

A5-10-2

財産区は固有の執行機関を持たないため、審査請求先となる附属機関を設置する権能もないと考えられます。開示請求については、通常その一部に財産区がある市町村又は特別区の長が開示決定等を行い、審査請求があったときは審査庁になります。

財産区の保有する個人情報に係る当該市町村又は特別区の長が行った開示決定等について、諮問先となる法第 105 条第 3 項において準用する同条第 1 項の「行政不服審査法第 81 条第 1 項又は第 2 項の機関」を置く機関については、条例で定めるところによりますが、市長等の附属機関に諮問することも妨げられません。
(令和 6 年 3 月追加)

Q5-10-3

地方公共団体の機関又は地方独立行政法人に対する開示決定等、訂正決定等、利用停止決定等又は開示請求、訂正請求若しくは利用停止請求に係る不作為に係る審査請求については、審理員に関する規定の適用がないものとされている(法第 106 条第1 項)。この点について、地方公共団体の判断により、審理員と同様の機能を持った者に審理手続を行わせることはできるか。

A5-10-3

法、行政不服審査法等の関係法令に違反しない限り、地方公共団体の判断により、行政不服審査法の審理員と同様の機能を持った者を置き、当該者に審査庁の審理手続を行わせることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-10-4

地方公共団体の機関又は地方独立行政法人が行った開示決定等、訂正決定等及び利用停止決定等について、行政不服審査法に基づく審査請求とは別に、不服の申出を受ける独自の制度を設けることはできるか。

A5-10-4

法、行政不服審査法等の関係法令に違反しない限り、地方公共団体の判断により、行政不服審査法に基づく審査請求とは別に、不服の申出を受ける独自の制度を設けることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q5-10-5

令和 3 年改正法の全面施行前の条例で設置している開示決定等に係る審査請求の諮問を受ける審査会等について、令和 3 年改正法の全面施行後は活用できないのか。

A5-10-5

令和 3 年改正法の全面施行前の条例で設置している審査会等については、設置条例等の改正により、法の開示決定等に係る審査請求の諮問を受ける機関(法第 105 条第 3 項の「行政不服審査法第 81 条第 1 項又は第 2 項の機関」)として位置付けることで、引き続き当該機関を活用することができます。

なお、「行政不服審査法第 81 条第 1 項又は第 2 項の機関」は一つの機関に限られるものではなく、不服審査の諮問を受ける一般的な機関として設置されている「行政不服審査会」とは別に、法の開示決定等に係る審査請求の諮問を受ける機関を設置することが可能です。

また、法の開示決定等に係る審査請求の諮問を受ける機関に、法第 129 条の規定に基づく審議会等の役割や、情報公開条例に係る審査請求の諮問を受ける役割など、必要な役割を持たせることも妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

6 行政機関等匿名加工情報の提供等

6-1 行政機関等匿名加工情報の提供
Q6-1-1

行政機関等において、仮名加工情報又は行政機関等匿名加工情報ではない匿名加工情報を作成することは可能か。

A6-1-1

「仮名加工情報」の作成等(法第 41 条)の規定は、行政機関等には適用がないことから、仮名加工情報を作成することはできません。行政機関等における仮名加工情報の取扱いに係る義務(法第 73 条)は、第三者から取得した仮名加工情報の取扱いに係る規定です(第三者から取得した仮名加工情報であっても、他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができる場合には個人情報である仮名加工情報に該当し、法第 73 条の適用はありません。)。

また、「匿名加工情報」の作成等(法第 43 条第 1 項)の規定についても、行政機関等には適用がなく、そのほかに、行政機関等における、行政機関等匿名加工情報ではない匿名加工情報の作成等に関する規定が存在しないことから、行政機関等匿名加工情報ではない匿名加工情報を作成することはできません。仮に行政機関等が法第 43 条の匿名加工情報の加工基準を充足する加工を行ったとしても、当該情報は行政機関等匿名加工情報ではない匿名加工情報に該当するものではありません。一方で、第三者から匿名加工情報の提供を受けた場合には、匿名加工情報の取扱いに係る義務が課されます(法第 123 条各項)。
(令和 6 年 3 月追加)

Q6-1-2

提案募集によらない行政機関等匿名加工情報の作成、提供は許容されるか。

A6-1-2

行政機関等匿名加工情報の作成については、法第 112 条の提案を受けた場合に限られるものではありません。行政機関等匿名加工情報を作成することは、作成の元となる保有個人情報の利用に該当し、法令に基づく場合、法第 61 条で特定された利用目的のために作成する場合又は法第 69 条 2 項各号に基づく利用目的以外の目的のために作成する場合が考えられます。

その上で、作成した行政機関等匿名加工情報は個人情報に該当しないところ、その提供については法第 109 条第 2 項各号に該当する場合に限定されます。

なお、行政機関の長等は、行政機関等匿名加工情報を作成する場合には、法第 116 条及び規則第 62 条で定める基準に基づく必要があるほか、法第 121 条第 1 項に基づきその作成に用いられた個人情報に係る本人を識別するために他の情報と照合することが禁止され、同条第 2 項に基づき行政機関等匿名加工情報等の漏えいを防止するために必要なものとして規則第 65 条で定める基準に従い、適切な管理のために必要な措置を講じなければならないことに留意する必要があります。

また、行政機関等匿名加工情報を作成したときは、法第 117 条に基づき、同条各号に掲げる事項を個人情報ファイル簿に記載する必要があるところ、この場合、当該行政機関等匿名加工情報について、法第 118 条の提案を受けることが考えられます。

この点、地方公共団体の機関は法第 119 条第 4 項に基づき、地方独立行政法人は同条第 8 項に基づき、それぞれ手数料を定める必要が生じ得ることに御留意ください。
(令和 6 年 3 月追加)

Q6-1-3

行政機関等から個人情報取扱事業者に対して、行政機関等匿名加工情報の作成を委託する場合に、委託先で作成した当該匿名加工情報の取扱いに関して行政機関等として留意すべき点は何か。

A6-1-3

提案募集の有無にかかわらず、行政機関等匿名加工情報の作成の委託を受けた委託先は、委託された業務の範囲内でのみ作成した当該匿名加工情報を取り扱わなければなりません。そのため、作成した当該匿名加工情報について、委託の内容と関係のない自社の営業活動等のために利用する、委託の内容と関係のない第三者への提供を行う、といったような利用・提供は、委託された業務以外での当該匿名加工情報の取扱いであり、許容されません。

委託元の行政機関等としては、委託先において、委託された業務以外で当該匿名加工情報を取り扱うなどの不適切な取扱いが行われないよう、行政機関等における安全管理措置の内容を踏まえた委託先選定基準の整備及び当該基準に従った適切な委託先の選定を行い、委託先における当該情報の取扱いの内容を契約条項等で確認の上、適切な監督を行う必要があります(法第 121 条第 2 項及び同条第 3 項)。なお、委託に伴い提供した個人情報の取扱いについては、Q3-1-1をご参照ください。
(令和 6 年 3 月追加)

Q6-1-4

地方公共団体や地方独立行政法人において、行政機関等匿名加工情報の提案募集について、当該提案募集の受付をとりまとめる窓口を設けることは可能か。

A6-1-4

提案募集に関する事務の実施主体は行政機関の長等であり、各地方公共団体の機関がその実施の義務を負います。なお、法において地方公共団体の機関における権限の委任規定はないものの、地方公共団体の機関は、法令の規定(地方自治法第 153 条、同法第 180 条の 7 等)により、法が定める事務を補助機関等に委任し、又はその職員に補助執行させることができます。この場合、これらの規定に基づき適切に対応することが求められます。

その上で、例えば、提案募集を受け付ける物理的な窓口を、同一地方公共団体内部の別の機関に置くことは、あくまで内部的な運用に留まるものであり、許容されます。

また、地方独立行政法人に対する提案募集についても、物理的な窓口を設立団体である地方公共団体の機関にも置くことは、法第 12 条第 2 項に基づく措置の一環として許容されます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q6-1-5

行政機関等匿名加工情報の提案において、提案書に記載された加工方法では加工に関する必要な基準を満たすことができない場合は、不適合としてよいのか。

A6-1-5

行政機関等匿名加工情報をその事業の用に供しようとする者は、行政機関の長等に対し、法第 112 条第 2 項各号に定める事項を記載した書面を提出することとなっており、加工方法に係る記載事項は、同項第 4 号に定めるとおり、同項第 3 号に掲げるもののほか、「提案に係る行政機関等匿名加工情報の作成に用いる第 116 条第 1 項の規定による加工の方法を特定するに足りる事項」とされています。具体的には、提案対象となる個人情報ファイルに含まれる記録項目のうち、どの項目について行政機関等匿名加工情報として提供を希望し、また、提供を希望する各々の記録項目について、どの程度の情報(例えば「住所」について、「都道府県のみ」の情報を希望する等)が記載されているかを確認する必要があります。 そして、法第 112 条第 2 項第 3 号及び第 4 号に掲げる事項により特定される加工の方法が法第 116 条第 1 項の基準に適合しない場合は、法第 114 条第 3 項に基づき、不適合の通知をすることになります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q6-1-6

法第 115 条の規定に基づき、法第 114 条第 2 項の規定による通知を受けた者が、行政機関の長等との間で締結する行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約は行政処分か、それとも私法上の契約か。また、地方公共団体の機関が契約を締結する場合、当該契約行為は法人たる地方公共団体の行為を代表しているのか。

A6-1-6

法第 115 条の規定に基づき、法第 114 条第 2 項の規定による通知を受けた者が、行政機関の長等との間で締結する行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約は私法上の契約であり、地方公共団体の機関が契約を締結する場合、当該契約行為は法人たる地方公共団体の行為を代表しているものです。
(令和 4 年 4 月更新)

Q6-1-7

提案募集において、事業者の提案に応じ、対象の個人情報ファイルから無作為で一部を抽出し、行政機関等匿名加工情報を作成することは可能か。

A6-1-7

提案募集は、原則として個人情報ファイル単位で行うものですが、事業者の提案に応じて、「行政機関等の事務及び事業の適正かつ円滑な運営に支障のない範囲内で、第 116 条第 1 項の基準に従い、当該個人情報ファイルを構成する保有個人情報を加工して匿名加工情報を作成することができるもの」(法第 60 条第 3 項第 3 号)である限りにおいて、特定の属性又は無作為で一部を抽出した行政機関等匿名加工情報を作成することは妨げられません。本審査に当たっては、提案書等から、個人情報ファイルに含まれる保有個人情報の加工方法が明確に特定できることが必要であり、不明な点や曖昧な点については、提案者に対して説明又は訂正を求め、行政機関等と提案をした者との間で認識に相違が生じないように留意する必要があります。

なお、行政機関の長等は、法第 112 条第 1 項又は法第 118 条第 1 項の提案をしようとする者がそれぞれ容易かつ的確に提案をすることができるよう、当該行政機関の長等の属する行政機関等が保有する保有個人情報の特定又は当該提案に資する情報の提供その他提案をしようとする者の利便を考慮した適切な措置を講ずることとされており(法第 127 条)、提案をしようとする者が個人情報ファイルに含まれる本人の数の規模等について把握できるよう情報提供することも考えられます。
(令和 6 年 3 月追加)

Q6-1-8

複数の個人情報ファイルを結合して、「行政機関等匿名加工情報」として提案事業者へ提供することは可能か。

A6-1-8

提案内容に応じて、複数の個人情報ファイルを結合した上で、基準に従い作成した行政機関等匿名加工情報を提供することは可能です。

ただし、提案者側の利活用ニーズに即して複数の個人情報ファイルの結合を求められた場合において、結合作業が行政機関等にとって膨大な業務となるとき等は、法第 114 条第 1 項第 7 号及び規則第 58 条に規定する審査基準(事務又は事業の遂行に著しい支障を及ぼさないものであること)に適合しない可能性もあることに留意する必要があります。
(令和 6 年 3 月追加)

Q6-1-9

地方公共団体の機関が法第 114 条第 1 項の規定に基づき法第 112 条第 1 項の提案の審査を行う場合において、法第 129 条の規定により、審議会等に対して諮問を行うべき旨を法施行条例で定めることは許容されるか。

A6-1-9

法第 114 条第 1 項各号に定める基準については、委員会においてその解釈を示すものですが、同項第 4 号の「事業が新たな産業の創出又は活力ある経済社会若しくは豊かな国民生活の実現に資するものであること」についての審査に当たり参照する基準の策定のために、必要な専門的知見を有する有識者に対して意見聴取を行うことは妨げられるものではなく、法第 129 条の規定により、法施行条例に定めを置いて、当該基準について専門的知見を有する委員で構成される審議会等に対して諮問することも妨げられません。

なお、この場合であっても、法第 114 条第 1 項第 4 号の適合の有無の判断は「行政機関の長等」が行うものであり、審議会等が実質的な判断を行うことはできないことに留意する必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)

6-2 手数料
Q6-2-1

手数料を条例で定める際にはどのようなことに留意すればよいか。

A6-2-1

地方公共団体においては、行政機関等匿名加工情報の手数料について政令第 31 条第 4 項に規定する額を標準額として条例で定める必要があるところ、同項に規定する標準額と異なるものを定める場合には、地方公共団体の特殊事情や実費の相違等の合理的な理由が必要となることに留意が必要です。
(令和 4 年 4 月追加)

7 雑則

7-1 審議会等への諮問
Q7-1-1

法第 129 条で規定する「個人情報の適正な取扱いを確保するため専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要があると認めるとき」とは具体的にどのような場面を想定しているのか。

A7-1-1

「個人情報の適正な取扱いを確保するため専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要があると認めるとき」とは、単に諮問をする必要があるというだけでなく、例えば、以下の場合が想定されます。

  • 定型的な案件の取扱いについて、専門的知見に基づく意見を踏まえて国の法令やガイドラインに従った運用ルールの細則を事前に設定しておくことで個人情報の適正かつ効果的な活用が図られる場合
  • 地方公共団体等が法律の範囲内で地域の特殊性に応じた必要性から独自の個人情報保護に関する施策を実施する場合で、地域の代表者や有識者等からの意見を聴取することが特に必要である場合
  • 法施行条例の改正(法に委任規定のあるもの等)に当たり、地域の代表者や有識者等からの意見を聴取することが特に必要である場合

なお、いわゆる「オンライン結合制限」や目的外利用制限などに関する規律として、個別案件における個人情報の取扱いについて、類型的に審議会等への諮問を行うべき旨を法施行条例で定めることは認められません。一方で、特定個人情報保護評価に関する規則(平成 26 年特定個人情報保護委員会規則第 1 号)第 7 条第 4 項に基づき審議会等に意見を聴く場合等、法第 129 条の規定に関わらず、個人情報保護法以外の法令に基づき、審議会等に対し意見を聴くことは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q7-1-2

Q7-1-1の回答にある「定型的な案件の取扱いについて、国の法令やガイドラインに従った運用ルールの細則を事前に設定しておくことで個人情報の適正かつ効果的な活用が図られる場合」として、例えば、法第 69 条第 2 項第 2 号及び第 3 号に規定する「相当の理由があるとき」に該当するか否かについて、「典型的な事例」について審議会へ諮問し、審議会から答申を得ることは含まれるか。

A7-1-2

法第 69 条第 2 項第 2 号及び第 3 号に規定する「相当の理由があるとき」に如何なる事例が該当するか否かについては、これらの条項の法解釈に関する事項であり、法第 129 条に規定する「個人情報の適正な取扱いを確保するため専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要であると認める場合」には該当しません。

Q7-1-1の回答にある「運用ルールの細則」については、例えば、法令やガイドライン、事務対応ガイドに従いつつ、専門的知見に基づく意見を踏まえて、法第 62 条に基づく利用目的の明示の具体的方法、法第 65 条に基づく正確性の確保のための方策、法第66 条に基づく安全管理措置の具体的手法、法第 69 条第 2 項第 1 号に基づく本人同意の取得方法等に関する運用ルールを策定する場合が考えられます。
(令和 4 年 4 月追加)

Q7-1-3

法施行条例において、審議会等が諮問に基づかずに行う調査、審議又は意見陳述に関する規定を設けることは可能か。

A7-1-3

法第 129 条は審議会等に対して地方公共団体の機関が行う諮問について規定するものであり、地方公共団体が附属機関等として設置する審議会等が自発的に行う調査、審議又は意見陳述を妨げるものではありません。ただし、地方公共団体が調査等を受けることを事実上の要件としたり、審議会の意見を尊重することを義務として定めるような法施行条例の規定を設けることはできない点に留意する必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q7-1-4

法第 129 条の規定に基づく審議会等への諮問について、諮問先の審議会等の構成員に専門的な知見を有する学識経験者等だけでなく、公募で選ばれた住民代表も含めても良いか。

A7-1-4

法第 129 条の規定に基づく審議会等への諮問については、「個人情報の適正な取扱いを確保するため専門的な知見に基づく意見を聴くことが特に必要であると認めるとき」に行うことができることとされており、諮問事項についての専門的な知見を有さない住民代表のみで構成された審議会等に対して諮問を行うことは、本条の規定の趣旨に反し、認められません。一方で、地方公共団体が審議会等の場を活用して、専門的な意見に対する住民の反応を確認する趣旨で住民代表からの意見を聞くこと自体は妨げられるものではなく、このような趣旨で専門的知見を有する構成員と住民代表たる構成員により審議会等を構成することも妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q7-1-5

「審議会その他の合議制の機関」とは具体的にどのような機関を想定しているのか。審査請求の審査を行う審査会を活用してもよいのか。

A7-1-5

「審議会その他の合議制の機関」とは、地方公共団体が条例で定めるところにより、執行機関の附属機関として設置する機関(地方自治法(昭和 22 年法律第 67 号) 第 138 条の 4 第 3 項)であり、具体的には、令和 3 年改正法の全面施行前の条例に基づき、各地方公共団体で個人情報保護制度について諮問を受けている個人情報保護審議会等の機関を想定しています。また、審査請求の審査を行う個人情報保護審査会が当該機関の役割を担うことも想定されます。
(令和 4 年 4 月追加)

7-2 苦情処理
Q7-2-1

法第 128 条の規定により地方公共団体の機関に対して努力義務が課されている、地方公共団体の機関における個人情報の取扱いに関する苦情の適切かつ迅速な処理に関連して、地方公共団体独自の嘱託委員による苦情相談の受付並びに地方公共団体の機関に対する事実確認及び是正勧告を行うことができるとする制度を設けることは可能か。

A7-2-1

地方公共団体の内部管理として、そうした制度を設けることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q7-2-2

法第 14 条の規定により地方公共団体に対して努力義務が課されている、個人情報の取扱いに関する事業者と本人との間に生じた苦情の処理のあっせん等に関連して、地方公共団体独自の嘱託委員による苦情相談の受付並びに事業者に対する事実確認及び是正勧告を行うことができるとする制度を設けることは可能か。

A7-2-2

法は、地方公共団体に対して個人情報を取り扱う事業者に対する行政処分を行う権限を付与しておらず、事業者に対して強制力を伴う形で事実確認や是正勧告を行うことはできません。地方公共団体独自の措置として、任意の協力を求める形で事業者に対して事実確認及び是正勧告を行うことは妨げられませんが、その場合でも事業者に対する是正勧告を行うに当たっては、委員会が示すガイドライン等を十分に参照した上で対応することが求められます。また、事業者に対して委員会の相談窓口を案内することも考えられます。
(令和 4 年 4 月追加)

8 委員会による監視等

8-1 施行の状況の報告(法第 165 条)
Q8-1-1

法第 165 条第 2 項に基づき、委員会が行う法の施行の状況の公表と別に、地方公共団体独自の措置として、例えば、年度単位で個人情報保護制度に係る運用状況の公表を行うことは差し支えないか。

A8-1-1

地方公共団体が自発的に行う住民向け情報公開として、そうした制度を設けることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

9 条例と法との関係

9-1 理念規定
Q9-1-1

地方公共団体が定める法施行条例において、基本理念や事業者・市民の責務についての規定を設けることは可能か。

A9-1-1

法の目的や規範に反することがなく、また、事業者や市民の権利義務に実体的な影響を与えることがない限りにおいて、法施行条例上に独自の理念規定を設けることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

9-2 個人情報の取扱い関係
Q9-2-1

地方公共団体内部の個人情報の適正な取扱いを確保するため、個人情報の安全管理のために保護責任者等の地方公共団体独自の役職を置いたり、当該役職者に対して内部調査権限を付与したり、地方公共団体内部の機関間の権限関係を定める等の制度を設けることは可能か。

A9-2-1

地方公共団体の内部管理として、そうした制度を設けることは妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

9-3 開示等関係
Q9-3-1

法第 108 条の規定に関連して、法第 82 条第 1 項の規定に基づく一部開示決定又は同条第 2 項に基づく不開示決定を行う際に、不開示情報を開示することができるようになる期日を明示することができるときは、その期日を明らかにしなければならない旨の規定を地方公共団体の独自の規定として設けることは可能か。

A9-3-1

このような規定を設けることは、法第 5 章第 4 節の規定に反するものではなく、妨げられません。
(令和 4 年 4 月追加)

9-4 その他
Q9-4-1

独自の罰則を法施行条例で規定することは可能か。

A9-4-1

地方自治法第 14 条第 3 項において、条例で規定することができる独自の罰則は、「条例に違反した者」に限られていることから、法に規定する義務等に違反した者に対する独自の罰則を法施行条例で規定することはできません。

他方、法施行条例で法に規定されていない独自の義務等を規定する場合において、当該義務等に違反した者に対する独自の罰則を法施行条例で規定することは可能です。

ただし、法施行条例で規定することができる独自の義務等については、法において条例で定めることとされた手数料の額に関する事項又は個人情報保護やデータ流通に直接影響を与えない事項(個人情報保護審査会の委員の秘密保持義務等)に限られることに留意する必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)

Q9-4-2

出資法人や指定管理者に対して、個人情報等の取扱いや開示等請求に関して法第 5 章の規律を準用するなど独自の規定を法施行条例で設けることはできるか。

A9-4-2

出資法人や指定管理者については、個人情報データベース等を事業の用に供している場合には、個人情報取扱事業者に当たり(法第 16 条第 2 項)、個人情報の取扱いについて法第 4 章の規定を遵守する必要があります。

その上で、出資法人や指定管理者について、法以外の法令や地方公共団体との契約、出資関係等に基づき、個人情報等の取扱いや開示等請求に関する必要な措置を求める旨を法施行条例以外の条例や契約条項等で規定することは可能と考えられますが、法施行条例において、行政機関等の個人情報等の取扱いや開示等請求に係る法の規定を準用するなど、法に規定する個人情報保護やデータ流通に直接影響を与えるような事項について独自の規定を置くことは認められません。
(令和 4 年 4 月追加)

Q9-4-3

令和 3 年改正法の全面施行前の個人情報保護条例において特定個人情報に関する規定を設けている地方公共団体においては、引き続き特定個人情報に関する規定を定める必要があるのか。規定を定める必要がある場合において、引き続き法施行条例において特定個人情報に関する規定を設けることができるのか、又は、新たに特定個人情報の保護に関する条例を設ける必要があるのか。

A9-4-3

令和 3 年改正法の全面施行後においては、地方公共団体の機関について法及び行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(平成 25年法律第 27 号。以下「番号法」という。)により読み替えられて適用される法が直接適用されることになるため、令和 3 年改正法の全面施行前の条例の規定のうち法の規定と重複する部分及び番号法により読み替えて適用される法の規定と重複する部分については廃止する必要があります。

なお、特定個人情報の開示請求等に係る手数料の減免に関する定めなど番号法により読み替えられて適用される法の規定により条例で定めることとされている事項は、必要に応じて条例を定めることとなりますが、条例の形式等については各地方公共団体において判断する必要があります。
(令和 4 年 4 月追加)