個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)

令和4年2月
個人情報保護委員会

個人情報の保護に関する法律についてのQ&A(行政機関等編)

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目次

1 適用対象

2 個人情報等の取扱い

3 個人情報ファイル

4 開示、訂正及び利用停止

【4-1 開示請求権等】

【4-2 不開示情報 】

【4-3 開示の方法 】

4-4 訂正及び利用停止

5 行政機関等匿名加工情報の提供等

【凡例】
「法」    個人情報の保護に関する法律(平成15年法律第57号)
「施行令」  個人情報の保護に関する法律施行令(平成15年政令第507号)
「令和3年改正法」 デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律(令和3年法律第 37 号)

※ なお、特に断りのない限り、本Q&Aにおいて示す法(個人情報の保護に関する法律)及び政令の条番号は、令和 3 年改正法第50条の施行後のものを示すものとする。

1 適用対象
Q1-1

行政機関等が運営する病院(法第 58 条に掲げる者及び業務に当たる場合に限る。)は、法第 16 条第 8 項の「学術研究機関等」に該当するのか。

A1-1

病院・診療所等の患者に対し直接医療を提供する事業者は法第 16 条第 8 項の「学術研究機関等」に該当しませんが、例えば、大学附属病院のように患者に対して直接医療を提供する機関であっても学術研究機関等である大学法人の一部門である場合には、当該大学法人全体として「学術研究」を主たる目的とする機関として、「学術研究機関等」に該当します。

なお、学術研究機関等による個人情報の取扱いに係る例外規定(法第 18 条第 3 項第 5号及び第 6 号、第 20 条第 2 項第 5 号及び第 6 号、第 27 条第 1 項第 5 号、第 6 号及び第 7号等)の適用に当たっては、対象となる個人情報又は個人データが「学術研究目的」で取り扱われる必要があるため、大学附属病院を含む大学における個人情報又は個人データの取扱いであっても、「学術研究目的」に該当しない場合には、これらの例外規定の対象にはなりません。

2 個人情報等の取扱い
Q2-1

意思表示が困難な高齢者等要介護者の介護情報等の個人情報を、入所予定介護施設や当該要介護者の親族に提供することは、法第 69 条第 2 項第 4 号の「本人以外のものに提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当するとして、利用目的以外の目的のための外部提供が許容されるか。

A2-1

法第 69 条第 2 項第 4 号の「本人以外のものに提供することが明らかに本人の利 益になるとき」については、本人の生命、身体又は財産を保護するために必要がある場合や、本人に対する金銭の給付又は栄典の授与等のために必要がある場合などがこれに当たります。

意思表示が困難な高齢者等要介護者の介護情報等の保有個人情報について、介護手続又は介護作業のため等、当該要介護者の生命、身体又は財産の保護のために必要な範囲で入所予定介護施設や当該要介護者に係る給付手続等を行う親族に提供することは、「本人以外のものに提供することが明らかに本人の利益になるとき」に当たり、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められない限り、利用目的以外の目的のための外部提供が許容されると考えられます。

なお、保有個人情報の介護手続又は介護作業のための利用又は外部提供が恒常的に行われる場合には、そのような利用又は外部提供が可能となるように利用目的を特定しておく必要があります。

3 個人情報ファイル
Q3-1

本人の数が政令で定める数未満の個人情報ファイルについて、個人情報ファイル簿を作成することは可能か。

A3-1

本人の数が 1,000 人未満の個人情報ファイルについては、個人情報ファイル簿の作成・公表義務の対象外とされていますが(法第 74 条第 2 項第 9 号、第 75 条第 2 項第 1 号及び政令第 19 条第 2 項)、本人の数や個人情報ファイルに含まれる保有個人情報の性質等を踏まえて個人情報ファイル簿を作成・公表することで特定の個人が識別される場合など、法の趣旨に反しない限り、本人の数が政令で定める数未満の個人情報ファイルについて、作成・公表を行うことは妨げられません。

ただし、本人の数が 1,000 人未満の個人情報ファイルは、行政機関等匿名加工情報の提案募集の対象外です。

4 開示、訂正及び利用停止
【4-1 開示請求権等】
Q4-1-1

未成年者とその法定代理人との利益相反が生じるような場合があり得るところ、未成年者の法定代理人による開示請求について、本人の意思を確認することはできるか。

A4-1-1

法定代理人は、任意代理人とは異なり、本人のために代理行為を行う義務は あっても、代理行為に本人の同意は要しないため、本人の意思と独立して開示請求を行うことができます。

もっとも、開示請求に係る保有個人情報について、当該保有個人情報を法定代理人に開示することにより本人の生命、健康、生活又は財産を害するおそれがある情報(法第 78条第 1 号に規定する不開示情報)に該当する場合もあるところ、同号該当性の判断に当たって、必要に応じて本人の意思を確認することは妨げられません。

Q4-1-2

本人が意思表示を行うことが困難な場合について、親族等の一定の者による開示請求を認めることはできるか。

A4-1-2

法第 76 条は本人又は法定代理人若しくは任意代理人にのみ開示請求を行うことを認めており、これら以外の者による開示請求は認められません。

なお、本人が意思表示を行うことが困難な場合に、法令に基づくことなく利用目的以外の目的のために親族等に本人の保有個人情報を提供することについては、本人の生命、身体又は財産を保護するために必要がある場合であれば、法第 69 条第 2 項第 4 号の「本人以外の者に保有個人情報を提供することが明らかに本人の利益になるとき」に該当し、本人又は第三者の権利利益を不当に侵害するおそれがあると認められない限り、利用目的以外の目的のために保有個人情報を親族等に提供することができます。

Q4-1-3

任意代理人からの開示請求について、本人の意思を特に確認する必要があるときに、本人に対して確認書を送付し、返信をもって本人の意思を確認する手続をとることはできるか。

A4-1-3

なりすまし等による開示等請求制度の悪用を防止する観点から、任意代理人の資格を確認することは重要であり、必要に応じて本人に対して確認書を送付し、その返信をもって本人の意思を確認することは妨げられません。

Q4-1-4

開示請求書に形式上の不備があり、相当の期間を定めて補正を求めたにもかかわらず、当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補正されない場合は、どのように対応すべきか。

A4-1-4

開示請求書に形式上の不備があり、相当の期間を定めて補正を求めたにも かかわらず、当該期間を経過しても、開示請求書の不備が補正されない場合は、不開示決定を行うこととなります(法第 82 条第 2 項)。

なお、保有個人情報の特定が不十分である開示請求がなされた場合には、法第 77 条第3項の趣旨を踏まえ、開示請求者に対して、保有個人情報の特定に資する情報の提供を積極的に行わなければなりません。特定不十分として不開示決定を行うということは、開示請求者に対して十分な情報提供を行ったにもかかわらず、開示請求者が補正の求めに応じなかった場合など開示請求者側に特別の事情がなければ生じないものであるということに留意する必要があります。

【4-2 不開示情報 】
Q4-2-1

法人等を代表する者が職務として行う行為に関する情報については、不開示情報である「開示請求者以外の個人に関する情報」(法第 78 条第 2 号)には該当しないと考えてよいか。

A4-2-1

法人等を代表する者が職務として行う行為等の当該法人等の行為そのものと評価される行為に関する情報については、法第 78 条第 2 号の不開示情報には該当しないと考えられます。なお、当該情報について、同条第 3 号の不開示情報に該当する場合があることに留意する必要があります。

Q4-2-2

他の法令の規定等により開示することができない情報は、法第 78 条各号において明示的に不開示情報とはされていないが、このような情報を不開示情報として取り扱うことはできるか。

A4-2-2

法第 78 条各号の不開示情報は、保護すべき権利利益に着目して分類したものであり、多様な情報に関し、可能な限り明確かつ実質的な判断により開示されるようにするため、不開示により保護しようとしている情報の類型ごとに定性的な支障の有無等を規律しているものです。そのため、他の法令の規定等により開示することができないとされている場合、通常これらの類型に該当するものと考えられますが、当該情報が法第 78条各号のいずれに該当するかを実質的に判断する必要があります。

Q4-2-3

法第 78 条第 2 号ハは、公務員等の職務の遂行に係る情報のうち、当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分は非開示情報に該当しない旨を規定しているが、当該公務員等の氏名は規定されていないため、当該氏名は不開示情報に該当し、開示することができないのか

A4-2-3

法第 78 条第 2 号ハは、公務員等の職務の遂行に係る情報のうち当該公務員等の職及び当該職務遂行の内容に係る部分を同号柱書の不開示情報から除外しています。他方、公務員等の職務遂行に係る情報に含まれる当該公務員等の氏名については、開示した場合、当該公務員等の私生活等に影響を及ぼすおそれがあり得ることから、私人の場合と同様に個人情報として保護に値すると位置付けられており、同号柱書の不開示情報から除外されていません。

もっとも、他の法令の規定により又は慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている情報については、同号イに該当し、例外的に開示することとなります。

行政機関においては、行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成 11 年法律第42 号)において、①氏名を公にすることにより、同法第 5 条第 2 項から第 6 号までに掲げる不開示情報を公にすることとなるような場合、②氏名を公にすることにより、個人の権利利益を害することとなるような場合を除き、行政機関に所属する職員(補助的業務に従事する非常勤職員を除く。)の職務遂行に係る情報に含まれる当該職員の氏名は公にするものとされていることから(「平成 17 年 8 月 3 日情報公開に関する連絡会議申合せ」参照。)、当該職員の氏名について、①及び②に当たらない場合には、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている」場合に該当すると考えられます。

また、独立行政法人等において職員の人事異動をホームページ等で公表するなど「平成17 年 8 月 3 日情報公開に関する連絡会議申合せ」によることなく氏名を公表する慣行がある場合や、行政機関等により作成され、又は行政機関等が公にする意思をもって(あるいは公にされることを前提に)提供した情報を基に作成され、現に一般に販売されている職員録に職と氏名が掲載されている場合には、「慣行として開示請求者が知ることができ、又は知ることが予定されている」場合に該当します。

【4-3 開示の方法 】
Q4-3-1

開示請求の対象は「保有個人情報」とされているが、1 つにまとめられた行政文書等の一部分に開示請求者に係る保有個人情報が記載されているような場合に、開示すべき範囲をどのように考えればよいか。

A4-3-1

開示請求の対象は、行政文書等に記録されている「保有個人情報」です。そ のため、開示請求の対象の特定は、行政文書等に記録されている「保有個人情報」単位で行うものであり、必ずしも「行政文書等」単位とはなりません。「保有個人情報」に該当する範囲については、行政文書等の性質や記録されている情報の内容等に応じて個別具体的に判断する必要があります。

なお、開示請求者に係る保有個人情報に該当しない部分については開示する必要はありませんが、当該保有個人情報に該当しない部分を含めて開示する場合には、当該保有個人情報に該当する部分が明確になるようにする必要があります。また、当該保有個人情報に該当しない部分についても、不開示情報を開示することがないよう留意する必要があります。

Q4-3-2

大量の開示請求を行う場合等、濫用的な開示請求について、拒否することは可能か。

A4-3-2

権利濫用が許されないことは「法の一般原則」であり、行政機関等の事務事 業を停滞させることを目的とするような開示請求の場合には、明文の規定がなくても、権利濫用を理由とする拒否処分を行うことは可能です。

ただし、法が個人の権利として開示請求権を認めている趣旨に鑑み、権利濫用の該当性の判断は個別具体的な事情に応じて慎重に行う必要があるところ、一般的に、開示請求対象の保有個人情報が大量であるということのみでは権利濫用とはいえず、請求者が行政機関等に支障を与えることを目的として開示請求を行うような場合でなければ、権利濫用とは認められません。

Q4-3-3

他の法令に基づき紙で写しを交付している情報について、電磁的記録を保有している場合に、電磁的記録の開示請求を受けたときは、法第 88 条第 1 項の「同一の方法で開示することとされている場合」には該当せず、電磁的記録の開示を実施する必要があるか。

A4-3-3

法は、他の法令(条例を含む。)の規定による開示の方法が法第 87 条第 1 項本文の開示の方法と同一である場合に限って、法に基づく開示として当該同一の方法による開示をしないこととしています(法第 88 条第 1 項)。そのため、他の法令に基づき紙で写しを交付している場合であっても、電磁的記録の開示について行政機関等が定める方法(法第 87 条第 1 項)による開示を求められたときは、「同一の方法で開示することとされている場合」には当たらないことから、不開示情報に該当するなどの別の理由がない限り、法に基づき電磁的記録について行政機関等が定める方法による開示を実施する必要があります。

【4-4 訂正及び利用停止】
Q4-4-1

訂正請求を行う者に対して、当該請求の内容が事実に合致することを証明する資料の提出又は提示を求めることはできるか。

A4-4-1

法法第 90 条第 1 項は、何人も、自己を本人とする保有個人情報の内容が事実でないと思料するときは、当該保有個人情報の訂正を請求することができることとしているところ、請求者が訂正請求に係る保有個人情報の内容を事実でないと考える根拠を示すことを超えて、当該請求の内容が事実に合致することを証明する資料を提出又は提示しなければならないこととすることは、当該請求者に対して一方的に当該請求の内容が事実に合致することの立証責任を課すこととなり、例えば、当該資料を行政機関等のみが保有している場合などにおいて、訂正請求ができる場合を実質的に制限するものであると考えられます。そのため、訂正請求を行う者に対して、当該資料の提出又は提示を求めることはできません。

なお、一般に、訂正請求を行う者は、開示を受けた保有個人情報のうち、①どの部分の表記について、②どのような根拠に基づき当該部分の表記が事実でないと判断し、③その結果、どのような表記に訂正すべきと考えているのか等、請求を受けた行政機関の長等が当該保有個人情報の訂正を行うべきか否かを判断するに足る内容を、当該行政機関の長等に自ら根拠を示して明確かつ具体的に主張する必要があります。そして、訂正請求を行う者から明確かつ具体的な主張や根拠の提示がない場合や当該根拠をもってしても当該請求に係る保有個人情報の内容が「事実でない」とは認められない場合には、法第 92 条の「訂正請求に理由があると認めるとき」に該当しないと判断することとなります。

Q4-4-2

行政機関の長等は、訂正決定に基づく保有個人情報の訂正の実施をした場合において、必要があると認めるときは、当該保有個人情報の提供先に対し、遅滞なく、その旨を書面により通知するものとされている(法第 97 条)。この点について、行政機関の長等において、提供先に当該保有個人情報を訂正させる等必要な措置を講じることを求めることはできるか。

A4-4-2

法行政機関の長等は、法第 70 条に規定する場合において必要があると認めるときは、保有個人情報の提供先に対して、個人情報の適切な管理のために必要な措置を講ずることを求めることができるところ、当該措置の一環として、提供先に対して訂正に応ずべき旨を求めることも考えられます。

5 行政機関等匿名加工情報の提供等
Q5-1

法第 113 条の規定に基づき、法第 112 条第 2 項の規定による通知を受けた者が、行政機関の長等との間で締結する行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約は行政処分か、それとも私法上の契約か。

A5-1

法第 113 条の規定に基づき、法第 112 条第 2 項の規定による通知を受けた者が、行政機関の長等との間で締結する行政機関等匿名加工情報の利用に関する契約は私法上の契約です。